フラれたので慰めて【うらたぬき】 (ページ4)

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4話ページ4

手を引かれて部屋からリビングに出てみれば、ふわりとトーストとコーヒーの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。なんだこれは。トーストの上にはベーコンと目玉焼きが乗っていて、サイドには小分けにされたサラダ、ちゃっかりポテサラ付き。

「待ってすごい」

朝ごはんなど、まともに食べるのはいつぶりだろう。元彼は朝は起きないし、私も面倒くさくて何も食べなかったので、少しばかり感動。簡単なものしかないけど、と横から聞こえてくるけれども、私には充分すぎるメニューだった。

「は、早く食べよう」

年甲斐にもなく、用意された朝食にテンションが上がってしまった私は、先程の出来事も忘れて目の前のごはんに飛びついてしまった。しかし美味い。

コーヒーを一口飲んだことで落ち着きを取り戻し、正面に座るトーストにかぶりつく男に向き直った。

「その、ごめんなさい。昨日だって迷惑かけただろうし、その上記憶無くすし朝ごはんまで…。」

私が俯けば、数秒間の沈黙。やはり怒っているのだろうか。目だけちらりとそちらを向ければ、今にも吹き出しそうな、笑いを一生懸命堪えるそいつの顔が映った。

「…何その顔。私何か変なこと言ったかな」

「っ、いや、おねーさん結構純情乙女っ…、あはははは！！かっわいー、さっきの話ね、嘘だよ。昨日はたまたまおねーさんとバーで出会って散々振られた愚痴聞かされてさ、挙げ句の果てに酔い潰れてもうダメそうだったから家まで送ってきただけ。手出しても出されてもないから安心してよ。一緒には寝たかもしれないけど」

2度目だろうか。爆弾発言。
はぁ！？と言わずにはいられなかった。こいつは大人の女性の心を弄んだと言うのか。いや、自分で大人の女性はイタイかもしれないけど。まだ21だし。

「っし、信じらんない！！最低！！」

「何が？わざわざちゃんとここまで連れて帰ってきてあげたのに、寧ろ感謝してほしいんだけど」

「そっ、それは感謝してるけど…！言っていい冗談とだめな冗談があるでしょう！？しかも一緒に寝たって何よあり得ない！！」

思わず立ち上がって怒鳴りつけてしまうけれど、至ってこいつは普通だった。なんだ私を嘗めてるのか。今すぐにでも胸ぐらを掴んで揺さぶってやりたい。朝からどんだけ怖い思いしたと思ってるんだこの野郎。

けれど、昨日から今日のこの朝食にかけて助かったところはまぁあるしそれはやめておいてやる。