22.どこで誰が見ているのか ページ23
さっそく女の子に囲まれている黄瀬、もとい涼太。
やっぱりあの言葉は噓だったのだろうか、とぼんやり眺めていると何故か彼と目が合った。
方や中にいて、方や外にいるためちゃんと目が合っているのかわからない。
だが、こちらを見ていることは確かで目をそらせない。
ねえ、涼太。
今、何考えているの?
何を思っているの?
その言葉は……本心?
無意識に彼の方へ手を伸ばしかけたとき、声が降ってきた。
「あれぇ、黄瀬ちんじゃん」
「あ、敦っ」
「なんか久しぶりに見るねえ。テレビでは見るけど」
バリバリと朝からポテチを食べる彼に口角がひくつく。
だからといって何か言うつもりはない。今更だから……。
隣りに腰を下ろした敦。
そういえば、黄瀬は、と思い窓の外を見ればもうそこには誰もいなかった。
そのことに多少なりともがっかりしながら、
先ほど伸ばしかけた手のひらを見つめる。
伸ばしてどうするつもりだったのだろう。
届きやしないのに……。
はあとため息をついたとき、隣から視線を感じて横を見る。
「なに?」
「べっつにぃ」
何故か不機嫌になっている敦。
この一瞬の間に何があったんだ?と内心首を傾げながら、
手に持っている中途半端に打ち込まれたスマホの文面を見て思い出す。
「あ、そうだ。お昼なんだけど、屋上にしない?」
「えー、食堂がいいんだけどー」
「でも、なんか、落ち着かなくて……今もだけど」
ぼそりと最後に呟いた声も彼には聞こえていたらしく、呆れたようにため息をつかれた。
だって、嫌なもんは嫌なんだもん。
唇を尖らせながらそっぽを向くと、彼は左手を出してきた。
「え……?」
「なんかお菓子くれたらいいよー」
もう食べきったのか……。
今更過ぎる彼の食欲に苦笑しながら、鞄の中を漁る。
なんやかんやで敦は私に甘いのだ。
鞄の奥から発掘したチョコにあげていいか少し悩むも、
敦だから大丈夫だろうという結論に達して、彼に渡した。
そんな私たちのやりとりを鋭い目で見ている人に気づかずに……。
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時