検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:6,934 hit

15.素直になるということ ページ16

目は口ほどに物を言う。

このことわざを教えてくれたのは、誰だったっけ……?



あのときと表情は違えど、はっきりとその眼に映った感情。
それに思わず息を飲む。
口が渇いてきて、仕方なしにコーヒーではなく水を飲む。

冷たい水のおかげですこし落ち着いた気がする……。

そっと深呼吸をし、Aと向き合う。


「忘れたなんて言わせないよ」


何をなんて聞かなくてもわかる。

中学のあの一件。俺はAを信じなかった。
誤解だと知ったのは、割とすぐだったのに変なプライドが邪魔をして謝れなかった。

そして、全中以後。
水っちとギクシャクし始めたのに気づいたAの助言を無視した。


「……あのときはごめん」

「……え」


素直に謝るとは思わなかったのだろう。
俺もすんなりと謝罪の言葉が出て、驚いていた。

だが、言ってしまえばあとは楽でずっと燻っていた思いを告げる。


「俺はあのとき、水っちがなんで傷ついたのかも、Aがなんで怒ったのかもわかんなかった」

「……」

「でも、高校でちゃんと理解した。水っちにも謝ったし。まあ、謝って許してもらえるとは思ってないっすけど」

「知ってる。ひなが嬉しそうに話してた」


知らないうちにAと水っちは名前で呼び合う仲になっていた。
高校で別々の学校に行ったのにも関わらず、定期的に連絡をとっていたことを最近知った。

たぶん、俺より今は水っちの方がこいつを知っているのだろう……。


「女子に嫉妬とか……」

「黄瀬?」


聞えなかったらしいAが怪訝そうに聞いてくる。
それに対して、俺はどんな顔をしているのだろうか……?

情けない顔をしているんだろうな……。

自嘲しながら、続きを話す。


「でも、わかんないこともある」

「……それは?」

「Aが、距離を置き始めた理由」


それを言って瞬間、わかりやすいほど彼女は狼狽えた。

14.たったひとこと……。→←14.忘れられない瞬間



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
32人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。