15.素直になるということ ページ16
目は口ほどに物を言う。
このことわざを教えてくれたのは、誰だったっけ……?
あのときと表情は違えど、はっきりとその眼に映った感情。
それに思わず息を飲む。
口が渇いてきて、仕方なしにコーヒーではなく水を飲む。
冷たい水のおかげですこし落ち着いた気がする……。
そっと深呼吸をし、Aと向き合う。
「忘れたなんて言わせないよ」
何をなんて聞かなくてもわかる。
中学のあの一件。俺はAを信じなかった。
誤解だと知ったのは、割とすぐだったのに変なプライドが邪魔をして謝れなかった。
そして、全中以後。
水っちとギクシャクし始めたのに気づいたAの助言を無視した。
「……あのときはごめん」
「……え」
素直に謝るとは思わなかったのだろう。
俺もすんなりと謝罪の言葉が出て、驚いていた。
だが、言ってしまえばあとは楽でずっと燻っていた思いを告げる。
「俺はあのとき、水っちがなんで傷ついたのかも、Aがなんで怒ったのかもわかんなかった」
「……」
「でも、高校でちゃんと理解した。水っちにも謝ったし。まあ、謝って許してもらえるとは思ってないっすけど」
「知ってる。ひなが嬉しそうに話してた」
知らないうちにAと水っちは名前で呼び合う仲になっていた。
高校で別々の学校に行ったのにも関わらず、定期的に連絡をとっていたことを最近知った。
たぶん、俺より今は水っちの方がこいつを知っているのだろう……。
「女子に嫉妬とか……」
「黄瀬?」
聞えなかったらしいAが怪訝そうに聞いてくる。
それに対して、俺はどんな顔をしているのだろうか……?
情けない顔をしているんだろうな……。
自嘲しながら、続きを話す。
「でも、わかんないこともある」
「……それは?」
「Aが、距離を置き始めた理由」
それを言って瞬間、わかりやすいほど彼女は狼狽えた。
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時