11.修羅場? ページ12
日本人男性の平均身長を軽く越している黄瀬に慄いたのか、男は逃げるように去っていった。
「黄瀬、ありが」
「このばかっ。何いっちょまえにナンパされてんすかっ」
お礼を言うよりも早く、彼の怒号が響く。
何事かとこちらを見る周囲に気づき、道の端へ移動する私達。
移動しているとき、暫く黄瀬に怒られるのが久しぶりすぎて呆気にとられていた私だったが、
何も頭から怒鳴らなくてもいいじゃないかと、段々イライラしてきた。
端っこに着くなり、掴まれていた手を振り払う。
びっくりしている黄瀬にすかさず私も言い返した。
「ナンパなんてされたくてされたわけないでしょっ?」
「はあ?!助けてやったのになんすか、その言いぐさはっ」
「別に助けてなんて頼んでないしっ」
「なっ、かわいくないっ」
自分でも可愛くないこと言ってんなあと思うが止まらない。
たぶん、黄瀬も同じなのだろう。
二人してどんどんヒートアップしていく。
「可愛くなくて結構よっ」
「おまっ、あそこに俺が来なかったらどうするつもりだったんすかっ」
「脛蹴って逃げるわよ」
「やっぱ、ばかだろっ」
「馬鹿って漢字もわからない人に言われたくないねっ」
「はあ!?ばかは漢字じゃないだろっ」
どんどん低レベルになっていく言い争いに、
道行く人々は知らん顔をして通り過ぎる。
そんな私たちに普通に声をかけてきた人がいた。
「なにやってんのぉ、二人とも」
「なんすかって紫原っち……」
「あ、敦……」
眠そうにあくびをこぼしながら割り込んできた第三者。
手には私の荷物があった……。
「それ、私の……」
「うん。置いてってたから持ってきたー」
「敦、ありがとう」
「なんで紫原っちには素直なんだよ……」
面白くなさそうに黄瀬が何かつぶやいた気がしたが、残念ながら私の耳には届かなかった。
とりあえず、くだらない喧嘩は彼のおかげで幕を下ろした。
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時