1.失った当たり前 ページ2
病院独特のアルコールの匂い。
ここの病棟はそれほど重い病を患っている人が少ないのか、
結構あちこちから笑い声や、楽しそうに談笑する声が聞こえる。
かくいう、目の前の彼女も
とても病気を患っているようには見えなかった……。
「涼くん、聞いてる?」
「……え?あ、っと、なんすか?」
全く聞いていなかったので、聞き返せば、
呆れたため息が二つ返ってきた。
「そんなんだから、すぐに振られるのよ」
「全くだ」
「それ今関係なくないっすかっ?!
てか、赤司っちに言われたく、あ、なんでもないっすすみませんでした」
中学三年から高校一年まで一切コンタクトとれず、
高校二年でも関係修復に手こずった赤司っち。
まあ、当時は何が水っちの琴線に触れたのか全くわからなかったが
今はもうわかって、あの時はそうなるべくしてなったのだと理解している。
ああ、わからないことはもう一個あったな……。
___「なんでわかんないのよっ」
なんで泣いたのか、はなんとなく理解している。
でも、なんで
「水っち、本当に知らないんすか?」
「だ・か・ら、さっき話したでしょ?
そのことについては、私は力になれないって」
さっき聞き逃したのは、その話だったらしい。
頼みの綱の水っちもダメとなると、本当に手がかりなしだ。
今度は俺がはあとため息をつく。
それを見て、水っちと赤司っちが呆れたようにまたため息をついた。
「な、なんすか」
「ていうかさぁ、涼くん。結局Aのこと____?」
その言葉に思考がまた、昔に飛んだ……。
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時