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 それを憧れた物語で知っているヴィルは、堪えきれなかった感情を胸の淵へと押し切り、目元に雫を溜めた



「散々あたし、アンタに酷いことをした…立派に成長したらありがとうって名一杯お礼を言おうと思ったのに」
「ほんと、最低な魔女だわあたし…」


 ごめんなさい、とナミのおでこに唇を落とした
 ヴィルの瞳から美しい涙が溢れていく
 同時刻ーーナミの夢のなかでもそれは起こっていた



「待って、今、かすかにナミが動いたよ」


 ルークがそれをいち早く察知する
 エペルはそこでハッ、となる






「待った。白雪姫の物語って最後、あのお姫さん、王子様のキスで目覚めんじゃなかったか!?」





 誰もが「ああっ!」と声を漏らした
 が、一瞬でピリッとした空気に変わる
 誰がナミにキスをするか、だ



「こんなことで争ってる場合じゃねぇ!俺がなんとかする!」


 エペルが手を上げた
 が、ヴィルにそれを阻止される



「待ちなさい姫林檎ちゃん」


「姫!?なんだって!?」


「まさか、ベタちゃん先輩がその王子とかになるんじゃないよね!?ふざけんなよ!」


「ルーク」


 ルークは「ウィ」と返事をすると、フロイドを両腕で捕獲した。「はあ!?ふざけんなし!」と暴れるウツボを笑顔で取り押さえている



「ルークさん!ええんですか!?ヴィルさんにやらせて!?アンタだってナミに惚れてんだろ!?」


 エペルの一言に胸を刺されるルークだが、「女王様の命令は絶対だよ」と瞳を鋭く光らせた
 まるでおとぎ話に出てくる狩人のような佇まいだった

 

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作者名:真灯 | 作成日時:2022年9月30日 18時

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