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「美しい…?私が一番…?」
「ええ…!ええ…!そうですよ!ヴィルさん」
「……ッ…」
ヴィルは一瞬、目を見開いた
のちに、「そんなのわかっているわ」と肩をすくめ、笑う
自然と目の回りにあった黒のアイメイクが落ちていく
炭の涙が流れていく
「あなたとお茶会をして正解だったわね」
ヴィルの衣装が溶け始めた
破れた小さな布が見えない空へと浮かんでいく
「え?ヴィルさん…?」
「やっぱり貴女は不思議な人。不思議な力を持っている。どんな魔法よりも大事なものを…」
それは“優しさ”だった
「待って、ヴィルさん!?なんで消えていくんですか!?」
彼はふっ、と笑う
「もう用はないからよ。貴女にかけた呪いもいずれ、本物の私が解いてくれるわ」
ナミの唇にヴィルはそっと手を伸ばした
「演技、上手にできていたわ。あれは私の力だけじゃなし得なかった。努力したのね、あなたも…」
ゆっくり彼は目を閉じる
そしてナミのおでこにキスをした
チュッ
「ありがとう。ありがとう私の毒林檎ちゃん」
それは王子様がお姫様にキスをするような優しい一コマだった
でも分かる
どうしてさっきまで虚ろだったヴィルが、ああして安らかな笑みを見せてくれるのか
ようやく解放されたからだ。見えない鎖に…
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作者名:真灯 | 作成日時:2022年9月30日 18時