30話 ページ30
，
「まあまあ。そう凄まないでくれよ、おれはただの行商人なんだから」
「商人の面と風格じゃねェんだよ」
思わず突っ込めば、慣れたものなのかスルーされた。地面に敷いていたシートの上に座っておれを見上げたので、そのまま見下ろしていると朗らかな笑み。
「まあまあ、座って」
「……あいつはどこにいる」
「そう急ぐなよ。おれがここにいる限り、あの子もこの島を出ることはないんだから」
のほほんとしているようで食えない問答。顔を歪めても意味はなく、ただニコニコ笑っている。
「さて、ご注文は？」
「あ？」
「何か探しているんだろう、手に入りにくいものかな？」
「……いや」
完全に会話のペースを持っていかれた。
ドフラミンゴのところにいたとき、いくつも商談に立ち会ってその話術を吸収してきた。だからこそ分かる。ヘラヘラしているようで会話の主導権を手放さないやり方がどうにもやりにくい。
目当ての薬も手に入ってしまったので、余計に上手に出づらくなってしまった。内心舌打ちをしながら機会を探る。
「まさか今になっても会いたがるのは思わなかった。あの子の命を狙うのは君か？」
「何の話だ」
「いつかに、あの子が『心臓を狙われている』と言うものだから。新聞にもすっぱ抜かれたし、最近は噂や痕跡を残さないようにしていたんだ」
いつぞやの島でシャチから聞いた話と合致する。
帰ったらシャチをもう一度バラすことが今確定した。
「……違ェ。おれは、ただ……」
ただ、何だ。何故言い淀む？
話したいと一言言えばいい。体を診察して、異常がなければそれでいい。フレバンスの思い出を語り合って、真実を伝えて、これからも親交を続けられれば、それで。
_______本当に？
「…………」
それだけで、あんなにも激情が燃え滾るのだろうか。
会ったこともない奴に会えないだけで、自制出来ないほどの衝動が湧き上がるのだろうか。
何が元になっている？何が起因となった？
おれはどうして会いたいんだ、おれはどうして話したいんだ、おれはどうしてフレバンスの真実をおれ自身が伝えることに固執しているんだ、おれはどうして側にいろと縋るんだ、どうして、どうして。
「_______……」
「うーん……もしや、よくないものを目覚めさせたか？」
思わずブルリと震えた体で鬼哭を抱えれば、目の前の男は困ったように笑っていた。
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 426人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ONEPIECE」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅榴(プロフ) - 翠さん» 多分、どうせ年内には作るんだよなぁと開き直ったので尻叩きに予告してしまいました笑 休息も兼ねますので多少時間はかかりますが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 時雨さん» 休息も兼ねてゆっくり考えようかなと思っているので、気長にお待ち頂けると嬉しいです〜！ご期待に添えるよう頑張ります、コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (レス) @page42 id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - なんと…！続編も…！！最高です、本当にありがとうございます。体調にはお気をつけて。また！ (2023年2月5日 16時) (レス) id: 64131c5e87 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 続編ありがとうございます🙏最高です；；！この後どんな展開になるのかとても楽しみです！これからも応援しています。 (2023年2月5日 13時) (レス) @page42 id: dee2fbc24a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - チックタックさん» ありがたいお言葉をありがとうございます！続編はうっすら考えてはいるものの、そもそも作るかを悩んでいるのでそう言って頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年1月31日 12時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
