18話 ページ18
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憤怒を表し、憎しみさえ滲ませる表情でその場から飛び出して行った小さな男の子の背を見送って、その目を悲しげに歪ませる。男は背後にある自身の妻の墓を見やり、目の前に座り込んだ。
「君は、白く美しいあの国が大好きだったね」
男は、娘を守りたい。
親も分からず、名前さえ曖昧なままフラフラと世界を彷徨っていた彼を見つけて、ありのままを受け止めてくれた生涯唯一の女性との、愛の結晶。
体の弱い彼女の出産を一度は止めたものの、どうしてもと引かない彼女に押し負けて出産。命を賭けた十月十日を経て、この世に可愛らしい娘が誕生したのだ。
名前も親も、自身の存在理由を何一つ持ち得なかった彼が得た、何より愛する女性と己の血を分けた世界に唯一の娘。例え何の力を持たずとも、それだけで愛すべき存在だった。
だから、フレバンスのことを知った彼はそれを隠し、愛娘を守るために海へ出た。これまで何度も海に出たが、強くなるために海に出るのは初めてだった。
強くなって、愛らしい娘が新聞に載るような悲惨で残虐な目に遭うことのないように。
強くなって、守られるべき娘が傷付くことなく健やかに育つように。
強くなって、宝石のような娘が自分と同じように人生をかけて愛し愛される相手を見つけられるように。
決して優しくはない世界でも、愛を見つけることは不可能じゃないと知っているから。
だから、この世で一番愛する娘にも、その幸福を知って欲しい。祝福されて欲しい。享受して欲しい。
フレバンスの悲劇は何も知らなくていい。ただ世界は優しく厳しいとだけ知っていてほしい。美しいあの人との思い出を戦火によって上塗りされるなど耐えられない。
自己満足も甚だしいエゴだということは自覚している。
いつか何かの拍子にフレバンスの事実を知ってしまった娘が何を思うか、目に見えている。
けれど、けれど。
「挨拶終わったよ、父さん！それからね、道中綺麗な花が……父さん？」
「……何でもないよ、友達には会えたかい？」
「会えてないよ、本当にこの島にいるのか疑わしくなってきたくらい」
彼とその妻のフレバンスでの暮らしは日が浅かったためか、二人の娘たる彼女に珀鉛病の兆しはない。だが出生を理由を殺されることもあると、彼は知っている。
嗚呼どうか、どうか。
理不尽な目に遭わぬように。迫害など受けることがないように。消えない傷がつくことのないように。
父さんはいつも願っているよ。守っているよ。
愛すべき、可愛い娘。
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「……っ！！」
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雅榴(プロフ) - 翠さん» 多分、どうせ年内には作るんだよなぁと開き直ったので尻叩きに予告してしまいました笑 休息も兼ねますので多少時間はかかりますが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 時雨さん» 休息も兼ねてゆっくり考えようかなと思っているので、気長にお待ち頂けると嬉しいです〜！ご期待に添えるよう頑張ります、コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (レス) @page42 id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - なんと…！続編も…！！最高です、本当にありがとうございます。体調にはお気をつけて。また！ (2023年2月5日 16時) (レス) id: 64131c5e87 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 続編ありがとうございます🙏最高です；；！この後どんな展開になるのかとても楽しみです！これからも応援しています。 (2023年2月5日 13時) (レス) @page42 id: dee2fbc24a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - チックタックさん» ありがたいお言葉をありがとうございます！続編はうっすら考えてはいるものの、そもそも作るかを悩んでいるのでそう言って頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年1月31日 12時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
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