136話 ページ25
，
「こんな状態じゃ連れていけない。でも置いていくのも……」
「……チョッパー、おまえだけでも残るか？」
「それもダメだ！戦いが終わった後、すぐに治療してやれる医者は多い方がいい！」
ようやく熱が移ったのか、冷たかった手に温もりが宿り始めた頃。途中で様子を見に来たチョッパーとルフィが顔を突き合わせて話しているの黙って見つめる。
腕の中で相変わらず眉間に皺を寄せるAは目覚める様子もなく、浅い呼吸を繰り返している。
「分かった。Aは置いていく、おたま達に頼もう」
「ルフィ……」
「なァに！大丈夫だ！おれ達は負けねェし、そう時間もかからねェ。勝って帰って、そん時にちゃんと治してやれ」
渋々といった様子で頷いたチョッパーに満足気に笑うルフィ。ワノ国に医者がいるにしても、チョッパーが近くにいないのが不安要素ではあるが、それなら早く終わらせればいいだけだ。
「……原因は分からねェのか、チョッパー」
「うん…… 錦えもん達にも聞いてみたけど、ワノ国の奇病ってわけでもないみたいだ。見たことも聞いたこともないって」
遺伝する心臓病も検討したらしいが、当時の先生やくいなの様子から考えてもそんな気配は感じたことがない。そう伝える前に症状が一致しないので違うと判断したらしいが。
今は比較的おとなしく眠っているが、トラ男の船に乗っていたときは眠っていても痛がるときがあったらしく、すっかり衰弱したらしい。
「……もしかしたら……精神的なものかもしれない」
「？どういうことだ？」
「まだ分からないけど、心と体の関係は密接だから……」
「ってことは、心をどうにかしねェとどうしようもねェってことか？」
「あくまで仮説だよ！でも、あり得なくはないと思うんだ。ゾロは一緒に過ごしてたんだろ、何か知らないか？」
チョッパーの問いに、一瞬答えられなかった。
喉が詰まり、ワノ国に来てからのことを思い出す。ずっと様子が変だったからチョッパーの言うこともすんなり理解出来たし納得も出来る。
だからこそ、ここまで苦しめる何かを知らない現実がいっそ苛立ちすら生むほどに悔しかったのだ。
「……何かはある。けど何にも言わねェんだ、こいつは」
「そっか……なら一度話を聞くことにするよ」
頭を撫でて、汗ばんで乱れた髪を整える。
腕の中で眠るほど心許されている。
そのはずなのに、肝心の心臓の痛みを取り除くことはできない。
……それならいっそ、何も許すな。
最初から何も許されない方が、無理矢理暴くことに何の躊躇いもなかったのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅榴(プロフ) - あやさん» 今作で更に好きになれたなら嬉しいです〜！👏 たくさん楽しんで頂けたなら幸いです。こちらこそ読んで頂きありがとうございました！コメントもありがとうございました！ (2022年12月13日 16時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - この作品を読ませてもらって本当にドキドキとときめきが止まらなかったです！元々ゾロは好きだったのですがこの作品でもっと好きになりました。素敵な作品をありがとうございました✨これからも頑張ってください応援してます！ (2022年12月13日 9時) (レス) @page49 id: 0f7e0fb150 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 翠さん» たくさんのお言葉ありがとうございます！とても楽しんで頂けたようでとても嬉しいです！長いし文も多いのに最後まで読んで下さってありがとうございました。時折頂けたコメントも嬉しかったしモチベになりました。コメントありがとうございました！(*´∀｀*) (2022年12月3日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - なな姫さん» ありがとうございます〜！楽しんで頂けたなら何よりです！次回もまたONE PIECEかなと思っているので、その時もまたお付き合い頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました〜！ (2022年12月3日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - 長文、何度ものコメント、失礼いたしました。お体にお気をつけて、過ごしていって下さい。今までも、これからも、応援しています！╰(*´︶`*)╯♡ (2022年12月3日 19時) (レス) @page49 id: eb4de4b192 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
