５５話 ページ5
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「てめェ、もとより攻撃する気無かっただろ」
「…………ケホッ」
血を吐いた。
うつ伏せのまま重い首を持ち上げてゾロを睨む彼女
しかしすぐに気力も無くなり、ガクリと首が落ちる。荒い息を繰り返し、仰向けになる
既に二人とも敵対する心はなかった
彼女の身体は血を流し、鉛のように重い。指一本動かす気力もない。ゾロが額の布を解いて腕に巻いた。
サンジは既にこの場を去り、ウソップに鍵を届けているだろう。彼女のダミーの鍵は彼女の脇に落ちている
「まともに食らったのは最初だけ。最初に撃った嵐脚も、二度目の物も、俺とクソコックにかすりはしても直撃はしなかった
あとは全部動かなくても当たらなかった
なんのつもりだ？」
「…………」
見えない空を見たがるように空を見上げる彼女に眉を寄せるゾロ。視界に入っている筈なのに、まるで目が合わない
「……私、には、」
夢が、あった。
遠い昔を思い出すように目を細める。
荒い息の中で、彼女は口を開いて言葉を紡ぐ
遠い遠いその昔。まだ訓練生だった頃。
お菓子を食べたり、外で遊んだり。そんな子どもらしいことは一切許されなくて、まだ見ぬ誰かの為だと、顔も名前も知らない人間の為に死ねと教育され、生きる為に鍛えていた頃
別に苦では無かった。遊びは許されなかったけど、友と呼べる人達はいた。取り巻く大人達は良い人達だった。時折申し訳なさそうに子どもの頭を撫でる人がいた。訓練へのアフターケアも万全で、ちゃんと名前もくれた。人として扱ってくれていた。
あそこは、良いところだった。
けれど、夢を抱くことは許されなかった。
「……海の果てを、見てみたいって」
既に手が届かない世界のことを思い出す前から、私の夢は海賊じみていた。
細かいことは考えていなかった。
けれど、漠然と、大好きな海を見てふと思ったのだ
この海の先には何があるんだろう。
海の果てに辿り着く頃には、私はどうなっているんだろう
「……貴方達は、その"海の果て"に、一番近い気がして」
目を両手で抑える。ゾロが視界から消える
目の奥にジワリと滲む熱を見られたくなかった
羨ましかった。
自由で、権利を当然のように持つ彼らが
眩しかった。
道の先に、誰かがいない未来を認めないと足搔ける彼らが
「……私のあの頃の友達、もうカクだけなんだよ
笑えるよね」
ゾロは何も言わなかった
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雅榴(プロフ) - 由華さん» ありがたいお言葉をたくさんありがとうございます！随分前の作品にコメントして頂き嬉しいです。ワンピースは思い付いたら、程度なのでご期待に添えるか分かりませんが、出来る限り良い作品を作れるよう頑張ります！コメントありがとうございました！ (2021年8月18日 22時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
由華(プロフ) - だきます！ワンピースの作者さんもう何年も活動されてない方がとても多いのでなんだかすごく嬉しかったです笑これからも無理のないよう更新していただけると助かります！！ (2021年8月16日 17時) (レス) id: 26fc746bcc (このIDを非表示/違反報告)
由華(プロフ) - 今更この作品にたどり着きました…。何年も占ツクを愛用してますが、自らお気に入り登録したのはこの作品が初めてです。本当に号泣しました、とても良い作品に出逢わせていただいて感謝しかないです。雅榴さんはまだ活動されてるみたいなので、他の作品も楽しませていた (2021年8月16日 17時) (レス) id: 26fc746bcc (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 深海さん» 有り難いお言葉をありがとうございます！後半など楽しく書けた作品でしたので、そう言って頂けてとても嬉しいです。コメントありがとうございました、今後ともどうぞよろしくお願いします！ (2020年2月25日 6時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 最高に最高でした…だめだ語彙力が失われていく…(( もう本当にこの作品を作ってくださってありがとうございます好きです… (2020年2月25日 3時) (レス) id: 442265d558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅榴
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時：2020年2月22日 0時
