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9話 ページ9



迎えに行ってやるべきだった。





またいつもの電伝虫越しの報告を終え、通話を切ろうとした時、彼女が俺の手を止めた。


『ねぇ』

「?なんだ?まだ何かあるのか?」


受話器を口元に近づけて返事をする。彼女の方からの返答がしばらく無く、ただ波の音が聞こえて、あぁ本当に別の船にいるんだなと今更思う


『……』

「……俺が話しててもいいか?」

『…………うん』


多分、口下手だから何から言えばいいのか迷っているんだろう。電伝虫越しでも分かる事に少し笑いながら、考える時間を稼いでやろうと口を開く


「ずっと顔を合わせていないな」

『……そうは言っても、一ヶ月経ってないよ』

「それでもだ。二週間は経ってる」


次に顔を合わせたら、きっと俺は自分の気持ちを白黒つけられる気がする。

それが、親愛なのか恋なのか、分からないけど。


「お前が居ないから、部下の奴らが困ってたぞ」

『……面目ないです』

「それはアイツらに言ってやってくれ」


小さく笑いながら、他愛ない話を続ける。

コアラが恋バナしたがってたとか、ハックが空手を勧めたがってたとか。ドラゴンさんが心配してたとか、色々と。

敢えて仕事から離れたプライベートな会話をしていると、向こうから小さく笑った声


『……サボくん』

「ん?」


『…………ありがとう』


目を閉じている電伝虫。ずっと電伝虫越しに表情を見ていると思うと、無性に彼女の顔が見たくなった。少し前まで意思疎通が楽だからと、顔ばかり見ていたけど、今度はもっと別のところを見よう。


手は俺とどのくらいサイズに差があるんだろう。
そういえば身長はどのくらい違うんだったか。
いつも着てる服以外に何か服はあるんだろうか。
アクセサリーとか、好きなんだろうか。



なァ、A


「……いや、俺は話したいことを話しただけだ」


会いてェなァ


『あのね』


なんて、言えねェけど。



『私ーーーー』

『ゼハハハハハハ!!見つけたぜェ』


「!?」


向こうから聞いたことのない男の声。
電伝虫越しでも分かる、友好そうに聞こえてとんでもなく邪悪な声だ。
今は夜で、彼女の周りには誰もいないはず。

思わず叫びそうになるのを堪えて、ジッと次の動きを待つ。机に置かれた握り拳が震えた


『……今までありがとう』

「!」



『ーーーーーさようなら』



その言葉を最後に、電伝虫は眠った。



「ーーーA!!!!!」



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yKIcXedzgwAXtB0(プロフ) - すごくキュンキュンしました!!少年の少しかわいらしい感じとかが表れてて悶えまくってました(*´∀`*)ポッ (2022年6月6日 0時) (レス) @page23 id: 419acffcc5 (このIDを非表示/違反報告)
ロロ - すごくよかった✨泣きそうになっちゃった〜( >Д<;)またどこかで会えるって信じたい!😆 (2022年2月22日 10時) (レス) id: 9b9224080b (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - ゆゆさん» コルボ山時代は書いてて楽しかったので、存分に堪能して頂けたようで嬉しいです!語彙力低下するほど感情移入して頂けた証拠ですので、謝ることは何一つとしてありませんよ!コメントと有り難いお言葉ありがとうございました! (2020年8月14日 0時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - コルボ山時代のお話、すごく甘酸っぱくて微笑ましくて頬緩みっぱなしでした・・・・(TT) 本当に最高な作品に出会えた気がします、最高な故に語彙力が低下してしまい申し訳無いです;_; (2020年8月13日 23時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - ホウ酸さん» 有り難いお言葉有り難いございます。何ヶ月も前の作品にコメント頂けると思っていなかったのでとても嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2020年7月26日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/  
作成日時:2020年1月30日 0時

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