8話 ページ8
,
「ーーーなぁ、A」
『?はい』
普段は要件を伝えて早々に電伝虫を切るのだが、その日は珍しく俺は切らなかった。恐らく首を傾げたであろう電伝虫のキョトンとした顔
「……まだ、帰れないか?」
『……そうだね』
「…………早く帰ってこいよ」
何が言いたいのかイマイチ伝わらなかったらしく、電伝虫は受話器を置くまでキョトンとしていた。
しばらく眠る電伝虫を見て、少し帽子を強く押さえて目元を伏せる。
ベッドに身を投げて、天井の照明を睨んだ。
「……恋?いや……なんだ……?」
恋とはまた違うようで、恋に酷似した感情
混乱が一周回ったおかげで頭は至極冷静で助かるが、それでも疑問は尽きない。
笑顔を思い浮かべてみる。
控えめな姿が目に浮かび、確かに、俗に言う暖かい感情のようなものは生まれる。しかしここで断言してはいけない。
次に、見たことはないが泣いた顔を想像してみる。
経験が無いので断言出来ないが、恋をすると恐らく胸が苦しくなり守ってやりたくなるんだろう。しかし俺の想いは、どちらかというと親愛的な庇護欲だ。
「??なんだこれ」
これが友人以上恋人未満か?……これは違うな。
友人以上好きな人未満、か。
帰ってきてほしいと思う俺もいれば、のびのびと過ごさせてやりたい想いもある。
手元に置いておきたい欲もあれば、好きにさせてやりたい想いもある
チグハグで、俺という人間が俺自身よく分からない。終始首を痛めそうなくらいに傾げていると、入ってきた仲間に驚かれた。
「……はぁ」
恋人、か。恋人ね。
そんな存在がいて嬉しいと思うと同時にその恋人が羨ましいという想いもある。
よくわかんねェなァ。
312人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yKIcXedzgwAXtB0(プロフ) - すごくキュンキュンしました!!少年の少しかわいらしい感じとかが表れてて悶えまくってました(*´∀`*)ポッ (2022年6月6日 0時) (レス) @page23 id: 419acffcc5 (このIDを非表示/違反報告)
ロロ - すごくよかった✨泣きそうになっちゃった〜( >Д<;)またどこかで会えるって信じたい!😆 (2022年2月22日 10時) (レス) id: 9b9224080b (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - ゆゆさん» コルボ山時代は書いてて楽しかったので、存分に堪能して頂けたようで嬉しいです!語彙力低下するほど感情移入して頂けた証拠ですので、謝ることは何一つとしてありませんよ!コメントと有り難いお言葉ありがとうございました! (2020年8月14日 0時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - コルボ山時代のお話、すごく甘酸っぱくて微笑ましくて頬緩みっぱなしでした・・・・(TT) 本当に最高な作品に出会えた気がします、最高な故に語彙力が低下してしまい申し訳無いです;_; (2020年8月13日 23時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - ホウ酸さん» 有り難いお言葉有り難いございます。何ヶ月も前の作品にコメント頂けると思っていなかったのでとても嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2020年7月26日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時:2020年1月30日 0時