第91話 ページ13
本音を言えば、仮にこれがすべて夢だったとしてもサービスが過ぎると思ってしまうくらいには舞い上がっている。
だからこそ、信じ難い。
「どうして、私のことを?」
思ったことをそのまま吐き出すと、総悟は「初めはっつーか……きっかけは」と言いつつ背中に回した腕を離した。
向き合った彼の目が私を見据える。
「お前の中に、姉上を感じたからかもしれねェ」
姉上。つまり、ミツバさん。
私がここに来た時には既にこの世を去っていたけれど、素敵な女性だったことはよく知っている。
そんな彼女と私には、料理や人となりなど、どことなく似ているところがある。総悟が以前そう言っていた。
「もともと色恋なんざどうでもいいタチだった。それが突然現れた、しかもごく普通の女に興味を持つなんざ、本来ならあり得なかっただろうな」
確かに言う通り、私は異次元人なこともあっていろいろ特異ではあるけれど、それらを無しにして見ればぶっちゃけ凡人だ。総悟のような……うん、腹黒ドSに見合う女かと言われると、世間一般的にはノーかな。
「それでも俺はお前に気を許していった。恐らく、無意識に姉上の代わりとして見ていたところがあったんだと思う」
姉上が亡くなって間もなかったから余計に、と。
少し悲しそうな、寂しそうな、そんな声色で。
「気がつけば惹かれてたのは確かだ。けど少なからず動機が不純だったのもまた事実。こんなの、お前に失礼でしかねェよな」
「……」
私はなにも言えなかった。
総悟はひとりじゃない。真選組には近藤さんや土方さんをはじめ、沢山の仲間がいる。時には万事屋だって力になってくれる。
それでもやっぱり、唯一の肉親を失った哀しみはすぐには消えなかったんだと思う。
大切な人を亡くして参っているところに突然、その人に似ている人物が現れたら、誰でも気になってしまうだろう。私が総悟の立場でもきっとそうなっていた。
(こんなに、複雑な気持ちを抱えていたなんて)
総悟の胸中を察して、少し胸が痛んだ。
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- 恋愛運: ★★★☆☆
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- 全体運: ★★★☆☆
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作者名:yunami☆彡 | 作成日時:2022年5月6日 12時