四百七通目 ページ8
半年間
兄さんは、我々国内を旅して回っていた
いつの間にか広大な領土となったこの国を馬で進むことは簡単ではなかったけれども
山越え谷越え、時には雨風を凌ぎつつ、久方ぶりの故郷を懐かしむ
そうしてやがて、五六ヶ月の歳月をかけ、中央区画に在する城へと帰還したのだった
毎年のように警護兵へと挨拶をしつつ、城内に馬を進める
期間を空けてこの城を眺めると、毎度のことだがよく出来た高層建築物だなと思う限りなのだった
馬を定位置に止め、あの新任メイド長に──いや、二年もメイド長をやっていれば、それはもう新任ではないかもだが──軽い挨拶をし、総統室に足を運ぶ
「グルッペン久しぶり。やっぱ全く変わらへんなおまえは」
彼の執務机にたんまり積もった書類束を見ながら、兄さんはかばかりか呆れながらに言った
いつ来ていつ見ても、彼は仕事に追われているように思える
トントンは目の下の隈を黒くするばかりだし
──うん。いつもどおりだと、僅かな安堵感を兄さんは覚えた
「それにしても兄さん、良い時期に帰ってきたな」
「良い時期？なんかあったん？」
疲れた肩を解すように腕を回しながら、グルッペンが変わらぬ語調で言う
兄さんは、はてと首を傾げながらも彼の言葉の続きを待った
この冬の時期に何かイベントのようなものはなかった気がする
まさか──
「嗚呼、想像通りだ」
グルッペンのやけに真剣そうな顔と、透かしたような声で、兄さんは察した
思わず反射のように、かばかりか顔を歪めてしまう
「兄さんに二つ、知らせておこうか」
「一つ。もう間もなくして、ガヴィル国との戦争が始まる」
「二つ──ショッピ君の延命処置を、外そうと思う」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2628人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
