四百三十五通目 ページ36
指揮官室(仮)を後にすると、Aは足早に城内を進んだ
二年前とは未だ構造が変わっていない通用口を選び、最短ルートで進んでいく
窓から跳んで降りても良いが、ここで無駄に跳躍のポーションを消費したくもない
何より、黒いローブを羽織り目深にフードを被ったAの姿は間者と思われても仕方のない者だからだ
あまりひと目につきたくは無い、映るのは監視カメラのみで良い
しかしAの心配事も大した意味は無く、大方の人員が出払うか職務に追われた場内は、案外手早く抜けきることができた
がらんどうの状態で放置できるのは、矢張り監視の目が行き届いている故の余裕だろうか、誘い込みの罠だろうか
──前者ならば、幹部の一人であるロボロが健在である証明のように感じられるから、Aの気が少し晴れるのだけれども
上層の状態を図るのも今は意味が無い、と頭を振って、Aは駆け出した
生憎と現在は、有益な移動手段が無い
俊敏のポーションを所持してはいるものの、今後必要となる可能性を考えると使用は控えた良いのかもしれない
それに、ここで飲んだとしても最前線である国境付近まではかなり距離がある
我々国軍隊とあまり接触をせず、かつ近場のルートを進むとなると、馬に乗って森の中を駆けるのが最善策なのだけれども
──ふと考え至ったその瞬間、何処かから足音がした
革靴か何かを履いた人間の足音が一人分
それと同時に聞こえてくるのは──馬の足の蹄鉄がコンクリートを鳴らす音だ
「ちょっと遠いけど、目的地まで頼むよ」
誰かに話しかけるような男の声、しかし相対する声が一向に聞こえる様子は無い
馬に話しかけているのだろうか、愛馬と共にこれから前線へ向かうところなのだろう
──申し訳ないが、好都合だ
A自身の良心の呵責は凄まじいと思うが、この場は利用させてもらおう
男と馬が馬小屋方面から現れたと同時に、Aはさらに素早く足を動かした
そして──
「ッ借りるぞ！」
油断していた男から馬の手綱を奪い、地面を一蹴すると軽やかに鞍に飛び乗った
息つく暇も無く、直後手綱を緩め馬を走らせる
「行けッ！」
その白馬は、走り出しから鮮やかに、素早く駆け出すのだった
洗練されたように
まるで、戦場へ向かい慣れたかのように
「あ、ちょ、外道丸ッ？！」
焦り困惑したような男の声が、後方から聞こえた気がした
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アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
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