四百十二通目 ページ13
「ッ……嘘やろ」
いくら待てども暮せども
彼が目覚める兆しなく
その指先はぴくりとも動かず
その呼吸は浅く弱く
最早死人に成り果てたかのような様
回復の見込みは、ないも同然だった
「……ッ兄さん、一体、どういうことなんやこれ」
今までずっと、黙って兄さんを見ていた皆々が、困惑した顔色を浮かべる
──黙って、というと語弊があるが
ゾムや鬱先生もコネシマと同じく、身体の回復を遂げた
残っていた傷跡は消え、昔のように体を動かしても怪我が痛まなくなったのだ
まじまじと自身の体を見つめていた彼等
やがてハッとしたように寝台を振り向けば、兄さんが悲痛そうな顔をしてショッピを見つめているではないか
しかもいつの間にか、かなりの時間も過ぎていて
あまり長い時間呼吸器を外していては、ショッピの身体に異常をきたすかもしれない
それに、自分たちに何が起こったのかもわからない
そんな思いで、兄さんに説明を求めたのである
「それは、ポーションの効果や」
「ポーション？」
「嗚呼……あの【うちに物資提供してる理科学先生】の発明のセクト」
いわゆる派生品
しかしその効能は、先生の技術の写し鏡のようで
「ッ……【治癒】のポーションなら、ショッピくんもって思ったけど……」
そう言って兄さんはさらに顔を歪めた
なんとなくだが面々は、状況を理解した
【件の理科学先生】には、かなりの期間で世話になっている
新しく薬品の研究を進めていることも知っていた
これが、その一部ということか
コネシマは身を持ってその効果を実感し、自身が僅かに恐怖していることを察する
こんな万能薬、よもや人間が作ったものだとは思えなかった
まるで、魔法のような
「ショ、ショッピくんは」
「──駄目や。目ぇあけるどころか、微塵も動く気せぇへん」
これは即時回復であるはずだ
故に、長くても一分や二分何も変化が訪れないのならば
それはつまり、もう回復できる状態ではないということで
「じゃ、あ」
「……ショッピくんは、もう、」
その先を、告げることはなかった
それでも皆は、何かを──最悪なことを、察してしまったようで
在る者は目に涙を溜め
また在る者は唇を噛み締め
──在る者は、彼との出会いを思い起こす
軍医室の中、ただ誰も言葉を発さずに、理解した
彼はもう、目覚めないと
「ッた……あれ、今何時……っすか」
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アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
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