三百九十八通目 ページ49
「密……偵」
「せや。スパイとか、間者って言い方もあるな」
噛みしめるように復唱すると、ようやっと言葉の意味に理解が及ぶようになってくる
密偵、密偵か
つまり兄さんが旅をしていたのは、様々各国の情報を集めるためだったということか
確かに路店、旅商人ならば、街や国を渡り歩いても違和感はない
立ち寄った街で何気なしに国の状況を聞いたり、不平不満等に耳を傾けるのだって、ちょっとした興味的な範疇にとどまる
観光客や住人として国に留まって情報を集める形式では、いつかは必ず足跡を見つけられてしまうのだから
画期的といえばそうだろう
「何処の国の、ですか」
「教えてもええけど……ヴィルの首が飛ぶことになると思うわ。それでもええ？」
「……でしたら結構です」
当たり前だが、拒否されてしまった
しかしAの本心としては、そこのところよく聞きたかったと思っている
そんな常軌を逸した方法を使ってくる国があるのならば、警戒を怠ってはならないだろうから
旅商人という形では、定期的に国に帰ることができない
故に、間者であるかの監視において、見落とされがちなのだ
「嗚呼……俺がこんなに話したんやから、そっちもおしえてや」
──ヴィル。おまえ何者なん？
兄さんがこちらの顔を伺うように言う
Aは大きく深呼吸すると、疑り深いその目を見返して口を開いた
「私は元々、我々国に住んでいました……ただ。それだけの人間です」
嘘はついていない
幹部になる前は、実際にそうだったのだから
──しかし、この場で出身国の話をすることは、かなりリスキーである可能性が高い
兄さんが何処の国の回し者かわからない今、もしかしたら我々国と敵対関係にある国の存在であることを否めないのだ
だが彼を見ているに
Aが出生と元の住みを話したけれども、攻撃態勢に入る様子は見受けられない
何処か、友好国の人間か
詳細はわからない
彼のことを考えようとしても、決定的な情報線が薄いゆえ、深層心理に至ることができない
しかしAは意を決したように、口を開いた
「兄さんに、お願いがあります──」
「私を、我々国に連れて行ってくれませんか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1969人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
萌木 - もしかしたら意図的で、この先の話を読んでいないのでそんなに偉そうに言えないですし、このコメントが届いているのかもわからないですけど、 三百七十六通目の最後、兄さんはヴィルヘルミナの名前しか知らない筈です。 ご確認お願い致します。 長文失礼致しました (2022年7月8日 17時) (
レス) @page27 id: 7b477ee6df (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 心の中で盛り上がってまいりましたと踊っています。主人公がうっに再会できること心より楽しみにしております。 (2020年1月22日 23時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！ - とうとう運命の瞬間が…！niさんと夢主ちゃんはどのような反応をするのか…楽しみに待っています！ (2020年1月22日 13時) (レス) id: 6e4f801f19 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» （コメントの検索避けありがとうございます）二人の関係がどう動くのか……夢主の運命は……どうぞ楽しみにお待ちください (2020年1月21日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - しゅがーさん» そろそろ�修砲眛�りますし、物語は展開を続け……この質問が一体どうなってしまうのか、ご期待しつつお待ちくださいな (2020年1月21日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
