二百五十四通目 ページ5
──ゾムは、戦慄した
戦争になった際、一番死ぬ確率が高い役割
それが、常日ごろ国境付近の監視を行なっている、観測部隊である
故に皆の統率が成っており──家族のような信頼感で繋がっている
そんな小隊の半分が、未だ戦争も始まっていない状況で──初の犠牲者と、相成った
「馬が撃ち殺され……残りの一頭に跨ったウド隊員も、じゅ、銃声に驚いた馬に振り落と、さ……れッ……！」
──そう言った黒髪の新兵は、目に涙を浮かべていた
それでもなお報告のためにと、えずく喉から声を引き絞る
「その頭に当てられた、照準……を……、マーク隊員が……かば、い……」
──黒髪の新兵は、崩れ落ちるようにして涙を流す
嗚咽しか吐き出さなくなったその口
──代わるように、茶髪の女兵が声を出した
「ノック隊員とモン隊長は、我々を逃がそうと……敵兵に組みかかり、亡くなりました」
「──よく、ここまで逃げられたな」
見る限り、武器は持っていない
──いや、本当は支給されているはずなのだ
きっと、奪われてしまったのだろう
「……それは──」
女兵が自身の背中に手を回すと、そこから取り出したのは
──ただの、木の棒だった
人の腕ほどの長さ、太さのそれ、たった一本
「ッ、もうええ……もうええ」
──わかった、充分にわかった
だから、もう無理して伝えなくてもいい
ゾムはその意味合いを込めて、首を柔く横に振った
「ッ……皆、すばらしい兵でした……せめて、報告役にと……命と引き換えに、我々を、生かしてくださった」
国をつぐんでいた熟練兵が、ほそぼそと呟く
その顔を、ゾムは知っていた
彼は確か、副隊長である
「申し訳、ありません……戦時下に、仲間を悔やむ暇なんて、ないというのに……」
「ッそんなことない、泣け。そんで忘れるな、自分らの仲間がどれだけ勇敢で、強い兵だったのか」
「は、い……！」
号哭が三つ、虚しく響く
──同刻、亡き隊員の遺体を鬱先生率いる救援部隊が見つけたのは
付近の川沿いの、砂利の上だった
先日の豪雨で倒れた樹木が、彼等の体にひっかかって
波に押し流されて、岸に上げられたのだろう
──敵兵が、殺した相手を上流から捨てたのである
見つかった三名の遺体の
──死してなお、安らかに浮かべた笑みを見て
鬱はその瞳に、激昂を宿したのである
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bh(プロフ) - 更新ありがとうございます...！続きとても楽しみにしてました。いよいよ主人公が仲間の一部と接触してとてもハラハラする展開で、もう続きが気になります....！とても面白い作品を書いてくださりありがとうございます。これからも末永く応援しております。 (2021年5月9日 14時) (
レス) id: 5ca24da818 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - FUJIさん» コメントありがとうございます……長い期間読んでいてくださったんですね、感謝しかありません。最近はかなり順調に更新できていますので、どうぞお楽しみください (2019年12月24日 19時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
FUJI(プロフ) - 初めまして！最初からずっとコメントしたくて勇気が出なかったのですが、ﾊﾗﾊﾗの展開で毎日通知を開いてしまうほど好きです(土下座)これからも更新楽しみにしております！ (2019年12月16日 22時) (レス) id: eb5fc7d995 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» その長年と比べてまで褒めてくださり……ありがとうございます！適度に待ち時間というわくわくを提供しつつ、更新頑張ります…… (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！さん» 明日と言わず、明後日明々後日も頑張っちゃってください( 'ω' )/ (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
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