【名探偵コナン】お前なんか大嫌いだ 3【降谷零】

124話 ページ46

夜が明けるよ。


誰かのそんな声が聞こえた気がした。
ぱちりと目を覚ませば、飛行機の窓の外が明るくなっており、未だ覚醒しない頭で何となく窓の外を見る。

……目が醒めるほどの美しい空だった。

夜明けの空はこんなにも美しいものだったのだろうか。
雲から出たばかりの太陽が朝を伝える。泣きたくなるほどに綺麗だった。


止まない雨が無いように、明けない夜はない。


古傷を追ったあの雨の日はとうに私の中で明けたように、夜だって明ける。
先がまだわからないことだらけで、暗くて、夜だとしても──きっと、朝は来る。

本当はまだ眠ってもいいのだが、もう起きていることにした。
夜明け空が眩しい。目に沁みるほどに。けれども焼き付けておきたかった。
夜明けの橙から、昼になる頃には空は蒼くなるのだろう。降谷の瞳のような、蒼い空に。

2年前、隔てられたガラス1枚をようやく超えられる日が来たのだ。

手を伸ばしたかった。抱き締めて欲しかった。
これでやっと、本当の意味で、君に触れられる。

『綺麗になったな』

君はそう言ったね。そうじゃないよ。私がそうであろうとしただけだ。
女としても、部下としても、君を支えられるように強くあり続けようとしたんだ。見た目にだって、2年前に比べてずっと気をつかうようになったんだよ。

全部、君のためなんだ。

幻想的な夜明けを眺めながら、吸い込まれるように、窓に額を当てる。
ひやりとした窓の冷たさなんてどうでも良かった。
眼下には落ちてしまいそうなほどの景色と雲が広がっている。

もし落ちて、このまま君のところへと行けるのなら、それなら、どれほどいいか。




あとたった数時間なのに、それだけがこんなにももどかしいのは、恋というものは本当に恐ろしいものだ。

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