116話 ページ38
あっという間の時間が過ぎた。
事件の後処理やその他の案件を片して、荷物をまとめるのも本当にギリギリになってしまったが、とうとうこの日、今日が日本を発ち、二年間FBI出向する日となる。
私の周りの人たちといえば、多忙な人ばかりだから、見送りだとかそう言うものは期待はしていなかったし、私の見送りに時間を割いてしまうのも申し訳なかったのだが、何故かこの日、予想に反して結構な人数が空港に見送りに来てくれたのだ。
「う、うう…お姉さん……」
「か、神崎さん、泣かないで欲しいな…お盆や正月、長期休暇が取れそうな時は帰ってくるから」
「帰ってきたらちゃんと連絡してこいよ。この通り神崎も喜ぶしな」
「斎藤先生まで来てたんですか…」
それだけじゃない。てっきり仕事だろうと思っていた同期達はちゃっかり有給もぎ取ってまでやって来てるし、ちらほら風見や公安の人間までいる始末だ。
秀一さんは後ろからそんな光景を見ているだけだし、少しは混乱してる私を落ち着けるなりなんなりして欲しいんだが。
「なんでこんな大人数で…」
「当たり前だろ、何せ二年は向こうだぞ?そりゃ有給もぎ取ってでも来るっての!」
「Aさん、向こうでも頑張ってくださいね!帰ってきたらこちらにも顔を出してくださると嬉しいです!」
「斎藤も言ってたけど、帰って来る時は連絡入れてくれよなー!ちゃんと予定合わせるからよ!」
頭を乱雑に撫でられたり、絡まれたり、見送りの言葉を言われたりと忙しい。
風見や先生、神崎さんに至っては仕事と学校の合間を縫ってまで来てくれたようだ。
「荷物はちゃんとまとめてるか?忘れモンは?お前変なとこで抜けてるから」
「松田はお母さんか!?ちゃんと何回も確認したから大丈夫だよ」
「……ならいいんだ。」
子供を撫でるように撫でられて、どうしたのかと思って松田の顔を見たら、笑ってはいるが、困ったような、悲しそうにも見えるが、眉が下がっていた。
「寂しい?」
「おう。結構な。」
「……そうか」
警察学校で、初めて話しかけてくれたのが松田で、学校で初めて友達になったのも松田だった。
まぁ実際は、ナンパのつもりで話しかけてきたらしいけど。
だから─今思えば、そういう経緯があったから、松田は私にとっては何処か特別な存在だった。
あの学校での、初めての、私の友達。
そうだな。そうだね。
私も寂しいよ、松田。
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ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 番外編を読みたいのですが、パスワードがわかりません。どうすれば?…… (2018年4月21日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年12月16日 21時