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114話 ページ36

・赤井視点

Aどころか降谷くんの姿も見かけないので、会場内を探したり聞いたりして、最上階へとやってくれば、静寂の中、僅かに聞こえる声、靴の音がして、扉に手をかけてこっそりと中をのぞいた。

楽しそうに、愛おしそうに降谷くんとAが踊っていて、驚いたのだ。それはもう。ここ最近で一番。

あの2人があのように互いに笑いかけているなんて俺が知る限りでは一度も見たことがなくて、一体何があったのかなんて、この際どうでもよかった。

こちらが思わず口出ししてしまいたくなるくらいに、すれ違っていた2人が今は笑っている。
可愛い妹分が、ひょっこり現れた男に取られるのは少しばかりいい気はしなかったが──それでも。

「ほーん、へえ?降谷やっとここまで来たのか」

「ちょっ、松田見えない!俺も見たい!」

「お前らちょっとボリューム落とせっての、バレるだろ」

「静かにしろ」

「……お前達いつの間に」

いつのまにか俺と一緒になって、扉の隙間から2人を眺めている警察学校組。本当にいつ来ていたんだ。全然気付かなかったんだが。

「俺らもあの2人探してたんだよ。そしたらこれだ。……10年か。本当に長かったわ」

「やっとここまで来たっていうか…肩の荷下りたわ。まあそれと同時に振られたわけだが」

「えっやっぱ松田ってAのこと」

「たりめーだろ。俺だって10年の片思いだぞ。まあ途中から応援するようになったがな。降谷がヘタレすぎて」

「松田…今日は飲もうぜ…俺も実質振られた」

「萩原もかよ…同期の衝撃のカミングアウトについて行けない…」

俺はお前らについていけないんだがな。

若干置いてけぼりだが、それでもまあ、この貴重な光景を目に焼き付けるのに、俺も俺で忙しいところだ。
松田と萩原は振られた、とは言ったが、特に悲愴は感じられなかった。それどころか、喜んでいる雰囲気すらある。
…それくらい応援されていたし、想われていたのだろう、Aは。

「………そうだな。確かに俺も振られた、という形になるのか」

師匠としても、兄としても、男としても。

「ま、降谷に愛想が尽きたら今度頃は俺が貰う」

「あ、松田ずるい!俺もだからな!」

………最後の最後まで諦めが悪いのは、同期揃って、降谷くん含めそっくりだ。

それでもきっとみんな思ってるのだろう。
『良かった』と。

自然と笑みが漏れた。
可愛い妹が離れていくのに少し寂しく思うと同時に、胸の中はどうしようもないほどの祝福で満たされた。

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ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 番外編を読みたいのですが、パスワードがわかりません。どうすれば?…… (2018年4月21日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月16日 21時

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