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105話 ページ27

……後で分かったことだが、男の名前は一ノ瀬裕也。
その妻の名前は一ノ瀬美月。

記者として取材のためにパーティー会場へと訪れた一ノ瀬の妻は、そのパーティー会場の裏で取引をされていた場所へ偶然遭遇してしまったらしい。
所謂闇金。果ては女性問題についてや、前々から噂話にはなっていたことの真実を、偶然知ってしまったそうだ。

……勿論それを花菱が見逃すはずもなく、様々な形で圧力をかけて来たそうだ。

彼女の命乞いで命を奪われるまでには至らなかったそうだが、それでも奪われないだけで、命そのものを握られていることには変わりなかった。
四六時中監視される日々。どのように情報を漏らされるかわからないので、黒服の男達が毎日家を訪れては家捜しをしたり、果ては暴力まで。……服の下の、見えないところを重点的にする執拗ぶりだったそうだ。

一ノ瀬はその頃は、夫婦仲は良くても、互いに仕事が多忙なあまりにほぼ別居状態だったそうだ。
……今思えば、ある日を境に突然連絡の頻度が減少したと言う。きっと、携帯でのやり取りさえも監視されていたのだろうから。

そんな日々に耐えて耐えてーーー彼女は、8ヶ月後に首を吊って自死したそうだ。

遺書は一ノ瀬の自宅へ送られる形となっていたらしく、事の経緯は全て遺書に綴られていたらしい。
会える日は表面上、いつもと変わりなさげだったのに、自分のいない間に、側にいない間にそんな拷問のような日々を送っていたと知った時ーー、一ノ瀬は何も気付いてやれなかった自分自身と、花菱に復讐を誓った。

どうしようもなく、これは1人の男の後悔の話で、恨むのも当然だった。

恨まない方が無理な話だ。大事な伴侶を、花菱が死ぬまでに追い詰めたのだ。
今でものうのうと生きて、絶えず黒い噂が蔓延り、妻を忘れたかのように振る舞うあの男が本当に憎くて仕方ないのだろう。

「なあアンタ、あの男は守る程の価値があると思うか?いくら命令だからって、あんな人の命を、紙切れ以下にしか思ってないようなあんな男に、守る価値があるか?」

「………」

「……直接殺すだけでは飽き足らない。俺と同じ絶望を味わえばいい。だから俺はわざわざ脅迫状を送って、警察と花菱の意識をこちらに向けるように集中させた」

「ッ、な」



ごそりとポケットに男は手を突っ込む。その中から出されたものに、私は目を見開く。
男がポケットから取り出したのはーーーーもう1つ別の、爆弾のボタンだった。

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ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 番外編を読みたいのですが、パスワードがわかりません。どうすれば?…… (2018年4月21日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月16日 21時

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