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67話 ページ31

劈く様な斎藤先生の制止の声で、私に飛びかかろうとしていた降谷の動きも、私の動きも止まる。シン、と静まり返っていることを不思議に思い、生徒の方を横目で見れば、何処か呆然とした顔で私達を見ていた。

……しまった。夢中になりすぎた。

「ったく、夢中になりすぎだお前ら。手本前提の手合わせだってこと、途中から忘れてただろ」

軽い拳骨を降谷と私は食らい、少しやりすぎたと反省する。だって、久しぶりに本気を出せる相手と戦えるとなると、昂ぶってしまって、思わず本気を出してしまった。

「手合わせは引き分け。……強くなったなぁ、降谷。」

斎藤先生が拳骨をしていた手が、降谷の頭を撫でる。
子供扱いされた事に驚いたのか、バッと降谷が後ろに下がった。

騒ぎ始めた生徒たちの「すげー…」「目で追えた?」「いや…むり」「降谷さんかっこいいねー!」「いや遠山さんも凄くない?」などと聞こえてくる。……喜べばいいのか、苦笑いをすればいいのか。

……それにしても、昔は降谷、私がちょっと本気を出しただけで、すぐに一本取られていたのに、さっきの手合わせでは何分も持った。
私が弱くなったのかと思ったが、降谷の拳が私に掠める度に、格段に昔より速さも重さも段違いに上がっていた。
私と会っていない数年間、鍛えて強くなっていたのは降谷もだったのだ。

……私が弱くなったんじゃなくて、降谷が、強くなっていたのだ。とても。

ざわざわと騒ぎ出した生徒たちと、斎藤先生の宥める声をどこか遠くに感じ、降谷の方を見れば、降谷も私の方を見ていた。

笑っていた。降谷が。私に向かって。

「久しぶりにお前と手合わせできて、楽しかったし嬉しかった。お前相手に、何分も戦えたぞ」

「……うん、そうだね。私も嬉しいよ、降谷」

「毎回負けていたのに、今回は引き分けだった。……いい進歩だと思わないか。」

「………」

「これで、やっと、」

お前に追いつける。

その言葉に、どうしようもなく泣きそうになった。
けれど人が大勢いる手前、それは寸のところで堪える。

追いかけてきてくれていたのだ、降谷は。ずっとずっと、何年も、こんな私を。

「わたしも、うれしい、なぁ」

涙を堪えていたから、代わりに声が掠れてしまった。
ざわざわと騒ぐ生徒たちの声で、掻き消されたかもと思ったが、聞こえていた様子の降谷は、もう一度私に笑ってくれた。


××××××

ようやく近付けた2人。

ゼロの執行人情報公開おめでとう!せめて5回は観に行く

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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月23日 18時

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