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50話 ページ12

・赤井視点

昔はただの小娘だった時代がAにもあったものだ。

何も知らない、何も出来ない、非力なだけの小娘だったAを偶然助けたその時から、俺とAの交友は始まった。

護身術程度の事は身につけたいと言い、俺が予定が空いた日なんかはAに武道を教える事になった。
しかし予想よりもずっと飲み込みが良く、当初教える予定のなかったものまで教え出すようになった。フィンガージャブとか。

俺に教えて貰って、身に付いたものは今に至る。
全て吸収してしまうほどの吸収と覚えの良さだった。元からきっと素質があったのだろう。
それが運命であったように、Aは警察になる道を歩むことを選んだ。俺もFBIになる道を選び、そのあとは暫く会う事はなかったが。

一度、2、3ヶ月ほど連絡がつかない時があった。

最初の頃は大して何も思わなかったが、ずっとつかない連絡に、何かあったのかと柄にもなく焦ってしまう。
心配になって、予定が空いた時に態々日本に出向いたくらいだった。もしかしたら返事は返ってこないかもしれないという可能性があっても、『今から会えるか』というメールを送る。
しかし、『会えますよ』と返ってきたのだ。

「腹を、抉られました。それで入院してたんです」

……その言葉に、頭を鈍器で殴られたような感覚がして、思わず目眩がする。

1週間ほど目覚めず、退院出来たのは2ヶ月後程。
それまでの遅れを取り戻すべく、今まで返事を返さなかったとAは謝罪した。
…目の下のクマが痛々しい。無理したように笑うAも痛々しかった。

こんな笑い方をするような奴じゃなかった。
不器用な奴ではあった。けれど、こんな歪に、悲痛そうに笑う奴ではなかった。
…セクハラだと、変態だとなんと言われようとなんでも良かった。Aのシャツを乱暴に剥ぐ。Aは抵抗すらしなかった。

痛々しい、大きな傷が、左の脇腹に刻まれていたのだ。

一度、Aは殺されたのだ。

俺の知らない時に、知らない場所で、知らない奴に、純真で無垢で、俺に教えを乞うたあの頃のAは殺されたのだ。

目の前には知らないAが居て、何かに取り憑かれたようなAを見るのが苦しくて、顔も名前も知らない、Aを一度殺した人間を、心底殺したいと思った。

「ごめんなさい、赤井さん。私、やっぱり赤井さんのいう通り、小娘ですね」

その言葉に、その顔に、どうしようもなく泣きたくなった。

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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月23日 18時

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