198 ページ10
元々、太宰が渡瀬Aの異能に気付いたのは、あの日、四年振りにAと再会した日に、中原中也にエリスが話した言葉からだった。
『あの子、異能持ちよ。…同じ異能だからこそ、何となく分かるもの。正体までは、流石に分からないけれど』
その言葉は後日、中也から太宰に告げられた。
Aは異能持ちだと。エリスがそんな冗談を云う少女ではない事を知っている太宰は、其の後すぐ安吾へとAの調査を頼む様依頼した。
ドストエフスキーは、一体何処から情報を掴んだのかは分からないが、少なくとも澁澤龍彦を太宰が横浜に招き入れた時点では、既にAの異能については認識いている様だった。
各々が其々の目的で動いている中、Aの異能の正体についても、彼らにとっては興味の対象だった。
其れは同時に。
Aの異能の正体が明かされると云う事は、明確に彼等との関係性が変わってしまう事にもなる。
反異能の異能力を持つ太宰とも。
ドストエフスキーはその性格上、自身にとって使えるモノであると認識したら、例えどんな物でも利用する。
そんな彼等の事は、当然Aは知る筈も無い。
だが、突如告げられた事実に、当然ながら受け止め切れている訳もなく。
困惑と焦りの表情で、歪んだ顔になっている。
「………俺が、異能、持ち…?」
訳が分からない、といった声色だった。
当然だろう。Aは今迄普通の人間として、一般人として生きて来た。自身が非力で無力である事は、何よりも分かっている。
異能力者など、遠い存在だと思っていたものが、実は、自分がそうだったなど。
「異能を使うまでもなく、否、目覚めるまでも無く平凡な場所で生きて来たから、気付け無かったのも、自覚しなかったのも無理はないよ。
………屹度、この横浜に来なければ、一生、自覚せずに済んだかもしれない」
太宰の言葉に、Aは頭が痛む。
其れは霧への不快感とは別物の痛み。
故郷に居た頃に、かつて自身に云われた言葉を思い出して顔を歪ませる。もう過ぎた事だと。もう吹っ切れた事であるのにと。
「話は終わったか?──その青年が、件の?」
其処に。
またもや人影が現れる。
雪の様に白く、何処か不気味な美しさを感じる男───全ての元凶、澁澤龍彦が、現れた。
×××
ドス君おたおめ
(http://img.u.nosv.org/item/2c0669d34c152f2d02d53a49e8234f3e/1573398518)
『斜陽の罪人』
「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう?」
505人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこ入りのよもぎもち。(プロフ) - 好きです。面白いと言うか、綺麗なお話だと思いました。途中で泣いちゃいました。何と言うか言葉に出来ません。神作ってこう言う物を言うんだと思いました。 (2021年8月11日 4時) (レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
佐 - めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:遥 | 作成日時:2019年10月14日 0時