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元々、太宰が渡瀬Aの異能に気付いたのは、あの日、四年振りにAと再会した日に、中原中也にエリスが話した言葉からだった。


『あの子、異能持ちよ。…同じ異能だからこそ、何となく分かるもの。正体までは、流石に分からないけれど』


その言葉は後日、中也から太宰に告げられた。
Aは異能持ちだと。エリスがそんな冗談を云う少女ではない事を知っている太宰は、其の後すぐ安吾へとAの調査を頼む様依頼した。
ドストエフスキーは、一体何処から情報を掴んだのかは分からないが、少なくとも澁澤龍彦を太宰が横浜に招き入れた時点では、既にAの異能については認識いている様だった。

各々が其々の目的で動いている中、Aの異能の正体についても、彼らにとっては興味の対象だった。


其れは同時に。
Aの異能の正体が明かされると云う事は、明確に彼等との関係性が変わってしまう事にもなる。

反異能の異能力を持つ太宰とも。
ドストエフスキーはその性格上、自身にとって使えるモノであると認識したら、例えどんな物でも利用する。

そんな彼等の事は、当然Aは知る筈も無い。
だが、突如告げられた事実に、当然ながら受け止め切れている訳もなく。
困惑と焦りの表情で、歪んだ顔になっている。


「………俺が、異能、持ち…?」


訳が分からない、といった声色だった。
当然だろう。Aは今迄普通の人間として、一般人として生きて来た。自身が非力で無力である事は、何よりも分かっている。
異能力者など、遠い存在だと思っていたものが、実は、自分がそうだったなど。


「異能を使うまでもなく、否、目覚めるまでも無く平凡な場所で生きて来たから、気付け無かったのも、自覚しなかったのも無理はないよ。
………屹度、この横浜に来なければ、一生、自覚せずに済んだかもしれない」


太宰の言葉に、Aは頭が痛む。
其れは霧への不快感とは別物の痛み。

故郷に居た頃に、かつて自身に云われた言葉を思い出して顔を歪ませる。もう過ぎた事だと。もう吹っ切れた事であるのにと。


「話は終わったか?──その青年が、件の?」


其処に。
またもや人影が現れる。

雪の様に白く、何処か不気味な美しさを感じる男───全ての元凶、澁澤龍彦が、現れた。

×××
ドス君おたおめ
(http://img.u.nosv.org/item/2c0669d34c152f2d02d53a49e8234f3e/1573398518)

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『斜陽の罪人』

「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう?」


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あんこ入りのよもぎもち。(プロフ) - 好きです。面白いと言うか、綺麗なお話だと思いました。途中で泣いちゃいました。何と言うか言葉に出来ません。神作ってこう言う物を言うんだと思いました。 (2021年8月11日 4時) (レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年10月14日 0時

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