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連絡は来ない。
あれから何日かは経っても。

学校でも顔色が悪過ぎてほぼ強制的に早退させられるわ、気を紛らわすためにバイトに行っても、皆に心配されて寧ろ暫く休めとすら云われた。
……気を紛らわす事すら出来ず、ぼんやりと只部屋の中で過ごしていた。
出来る事と云ったら、休んでいる間の勉強だが、集中出来なくて合間合間に投げ出してしまったり、前にも増して料理に自分の不調やストレスをぶつけて、俺では食いきれない程の料理が量産されていく悪循環。

大家さんに、作り過ぎたと料理を持って行っても、顔色が悪いから休みなさいと云われる位だった。
………相当に、酷いらしい。

織田さんから連絡が返ってこない時点で、きっともう、そういう事なのだろうと分かってしまっている自分がいた。
……此処まで意気消沈するとは、俺は将来看護師になって、其れ以上の命を見送る側になるのに、此れで、大丈夫なのかと心配にすらなる。
決まった訳では無くとも、きっともう、織田さんは、



鳴らされた呼び鈴に、怠い身体をがばりと起こす。

震える身体を叱咤して、ゆっくりと玄関へと進む。
一度扉の前でぴたりと足を止めて、ゆっくりと俺は玄関の扉を開いた。

そこに居たのは、太宰。

顔面にも巻いていた包帯は見る姿も無く、何時も羽織っていた黒外套と背広では無く、砂色の外套を羽織い、きらりと光る翠のループタイが目に付いた。
黒を基調とした何時もの太宰とは違うその格好に、俺は呆気にとられる。

「……太宰、」

「久しぶり。漸く来る事が出来たよ。全てを終わらせて、行く前に、君に会いに来ようと思ってね」

まるで今生の別れの様な太宰の台詞に、心臓が冷える。
俺が何かを云う前に、それを読んでいたかの様に太宰は口を挟んだ。

「……きっと、察しはついていたと思う。連絡がするのも遅くなったし、まあ、する暇が無かったって云うのもあったのだけれど。」

どくり、どくり、と心臓の鼓動が早くなる。
心臓を落ち着かせる様に、服の裾をぎゅう、と強く握りしめた。
心臓は落ち着かない。それどころか、更に速くなるばかりで。




「………織田作が、死んだ」




その言葉に、『嗚呼、矢っ張りか。』と何処か冷静な自分がいた。



雨が降り出す。
織田さんからの最後のメールが来たあの日の様に、雨が、降っていた。

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(プロフ) - 勿論不快にさせた事実は変わりませんが、改めまして女狐呼びは後日修正させていただきます。公式からの呼び名がもし出たらその際はまた変えるかもしれないです。今回はお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。 (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ららさん» 妲己、というのもよく考えたら失礼かなと思ったので追記を。前記の通りキャラを貶す意図はなく、クリスティ爵の残酷な面が垣間見える彼女の言葉一つで街を焼ける、といった権力の強さに狐であった妲己のようだ、といった自分の解釈もあります。→ (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 呼び方の方は後日修正させていただきます。コメントありがとうございました。 (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 誤解を招くようですが、クリスティ爵はとても好きです。映画で動いて声もついたのは本当にとても嬉しかったです。映画のイメージで「こう言う感じの方かな」と言ったイメージが先走ってしまって申し訳ありません。それと夢主持ち上げ、というよりはその辺の→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ららさん» といった意味で女狐呼びをさせていました。軽率にしてしまい申し訳ありません。情報が少ない方なので、私なりの解釈等も混ざってしまい、呼び方等に不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。決してキャラを貶すために使ったものではありませんでした。→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年11月13日 18時

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