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・太宰視点
首領の元に行く前に、Aから電話が掛かってきた。
掠れた声で太宰、と名前を呼ばれて如何したの、と返そうとする前に『織田、さんは、』と云われてヒュ、と喉が鳴った。
『太宰、何かあったのか』
「……A」
『織田さん、電話掛けても、留守電を残しても何も返って来ない。太宰、どうしよう、』
……虫の知らせでも感じ取ってるのだろうか。
珍しく取り乱した様子のAを落ち着かせる様に、私は名前を呼ぶ。
大丈夫、落ち着いて。一回ゆっくり息を吸って吐くんだ。…そう、其れでいい。
電話口から聴こえる声と呼吸で確認をする。…半分は、自分自身にも言い聞かせていたのかもしれない。
「私も私でやる事がある。……ちゃんとした連絡を返せるのが、いつになるかは私も分からない。けれど落ち着いて呉れ。
………そして、覚悟だけも、しておいて」
……自分で言っておいて、その言葉は重くのしかかった。
友の意思を尊重して、私はあの時織田作の背中を見送るしか出来なかった。例え今織田作が行っている行動が、子ども達が浮かばれない事であったとしても、友が選んだことに、私は口を挟めなかった。
『……わかっ、た、』
彼には、重過ぎた話だろう。
こんなにも取り乱しているのは、きっと虫の知らせだけじゃなくて、織田作から何かしらのアクションがあったと云うことだろうか。
最悪の事態にならない事だけ祈る。その為に私は首領の元へと向かうのだ。そして、この全ての裏側に渦巻く大胆な構図の答え合わせも、する為に。
一言二言話して、Aとの電話を切った。…久し振りの、電話だったな。
こんな状況じゃなければ、私はきっと凄く喜んだだろうに。
そして、この日が私とマフィアが明確に決別する理由が出来た日で、
私とAが漸く友人へと踏み込める、言葉を告げられた日でもあった。
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遥(プロフ) - 勿論不快にさせた事実は変わりませんが、改めまして女狐呼びは後日修正させていただきます。公式からの呼び名がもし出たらその際はまた変えるかもしれないです。今回はお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。 (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ららさん» 妲己、というのもよく考えたら失礼かなと思ったので追記を。前記の通りキャラを貶す意図はなく、クリスティ爵の残酷な面が垣間見える彼女の言葉一つで街を焼ける、といった権力の強さに狐であった妲己のようだ、といった自分の解釈もあります。→ (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 呼び方の方は後日修正させていただきます。コメントありがとうございました。 (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 誤解を招くようですが、クリスティ爵はとても好きです。映画で動いて声もついたのは本当にとても嬉しかったです。映画のイメージで「こう言う感じの方かな」と言ったイメージが先走ってしまって申し訳ありません。それと夢主持ち上げ、というよりはその辺の→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ららさん» といった意味で女狐呼びをさせていました。軽率にしてしまい申し訳ありません。情報が少ない方なので、私なりの解釈等も混ざってしまい、呼び方等に不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。決してキャラを貶すために使ったものではありませんでした。→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年11月13日 18時