45 ページ48
「今日、ぼくの誕生日なんですよ」
そろそろ日も暮れてきて、ご飯どうするかな、ドス君と食べようかなと思っていた時、唐突に彼はそう云った。
「君の家に行こうとすると、何時も大抵太宰君達が居るので、余り遊ぶ事も出来ず、この数日で爪を噛む回数が増えました」
「だから噛むなっての」
「でも今日、ぼくの生まれた日に君と一緒に遊べているのは、ぼくにとっては嬉しい事なんです」
嗚呼、だから今日、唐突にやって来て一緒に出掛けようなんて。
日本観光なんて口実だった。只俺を連れ出して、一緒に遊びたいだけの、ドス君の我儘だったのだ。
「云ってくれたらちゃんと祝ったのに」
「気を遣うでしょう。君とは自然体で遊んで欲しかった。けれども云ったのは、ぼくにも君に祝って欲しい気持ちは有るんです」
「我儘だなあ」
「いいでしょう、誕生日なんですから」
フラフラとやって来たこの場所は東京港連絡橋───まあ一般的にはレインボーブリッジなんて呼ばれている、あの有名な橋が見える場所に来ている。
日が沈むのも早くなり、ライトアップされる時間も必然と早くなる。俺達が着いた少し後くらいに、橋の明かりがついた。
………うわあ、本当にデートみたいになってる。
然しまあ、ドス君の誕生日なら別に良いだろう。
「誕生日おめでとう。
発音合ってるかなと不安になったが、ドス君は目をぱちりと丸くする。
その後、ドス君にしては珍しい、何の含みもない、只の青年が笑っている──普通の、微笑みを浮かべた。
「呼んでっていっても何時も呼ばない癖に」
「まあ誕生日だし。でも今日限りだよ、呼びにくいったらありゃしない」
「ふふ、君らしい。ですが、ありがとうございます」
友人に祝われるのは、矢張り気分が良いですね。
この時期になると海の近くは寒い。
正直景色は綺麗でも身体は寒さを訴えてるので立ち去りたい気分では有るのだが、──まあ、ドス君が嬉しそうなので。
「却説、ぼくの誕生日はまだまだ時間がありますので、此処まで振り回されてくれた御礼に都内の高い料理店でも行きましょうか」
「祝われる側だろ祝わせろよ！！御礼どころか高級料理は俺の脆弱なメンタルが死ぬ！！」
「我儘聞いてくれるでしょう？」
そう云われては口を噤むしかなく、抵抗しなくなった俺を引っ張って、珍しく嬉しそうにドス君は歩き出した。
───俺の脆弱なメンタルを引き換えに、ドス君が楽しそうで有るなら、まあ、いいか、もう、うん……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1396人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (
レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです！ (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです！！ (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです！ (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか？ (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遥
| 作成日時：2018年9月28日 16時
