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・芥川視点
暖かいものが額に押し当てられる感覚に目を覚ました。
「あ、起きた」
「ッ!?」
以前、太宰さんが話しかけていた只の一般人。何処にでもいる様な、あの男が僕の額に手を当てていた。
起き上がろうとしたら、身体全体が痛んでその痛みに何も出来なくなる。寝かせられている布団の中から抜け出す事も動く事も出来なかった。
太宰さんの折檻で蹴られた箇所が痛む。
「……俺に口出しはできないし、多分君も望んでないだろうけど」
何の話だ、と云おうとしたところで、いつも身につけている外套が無いことに気がつく。
それに気付けば、身体中の痛みなんて無視出来た。がばりと起き上がれば、男は驚いた顔をする。
ハンガーに掛けてある僕の外套を見つければ、僕が立ち上がる前に察したらしい男は其れを手に取って僕に渡した。
「大事な物なの?」
「……貴様には関係無い。第一、何故僕はこの様な場所に居る」
「太宰も居るよ。粗俺が連れて来た様なものかな」
「………」
この男と、太宰さんは一体どんな関係なのだ。
友人、の様には見えなかった。精々知り合いといった感じであると思っていたのに。
「食欲ある?」
「……は、」
「俺と太宰は先刻飯食ったんだけど、君は食える?多分君、食欲は元から余り無いんだろうけれど、食えるもの食っておかないともっと細くなるよ」
「……」
「マフィアなんだろ、君」
その言葉に羅生門を発動しかけるが、太宰さんが云っていたこの男に牙を向ければ『10回は殺す』という言葉を思い出して、何も出来なくなる。
一般人かと思っていたが、闇医者か何かの類なのか。纏まらない思考にぐるぐると頭が痛くなる。
「雑炊作ってくるから座ってなよ。と言うわけで太宰、宜しく」
「はぁーいAお母さん」
「ッ、太宰さん!?」
入れ替わる様にして現れた太宰さんはどかりと僕の近くに座る。
突如上司と二人きりにされて、本格的に訳がわからない。如何してこんなことに。そして、明らかにこの二人は以前目にした時よりも親しげになって居ないだろうか。
「あの子に牙を向けない言い付けだけは守れてるじゃないか」
「………」
「君の事、命懸けで私から庇って、此処に連れて来たの、彼なんだよ」
それは、どういう。
そう太宰さんに問い掛けても、答える気が無いのか太宰さんは何も云わなかった。自分の知らぬ間に、あの男にこの恐ろしい人から庇われていた事実が、如何しても現実味が湧かないまま。
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時