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・太宰視点

「………」

此処は何処だろう。

見覚えが全くない、見知らぬ天井がまず真っ先に視界に入る。
天井と、部屋の感じを見る限りでは恐らくはアパートか何かの一室なのだろうが、何故こうも、如何にも一般的な平和な空間に、全く似合わない自分がこんな所で横たわっているのか。

最後に覚えているのは川に飛び込んで其処から意識が薄れていった事だ。
今回こそは、とは思ったが、こうやって目を覚まし、息をしているということは失敗に終わったという事だ。
多分こんな場所に居るということは、私は誰かに発見されて助けられた…といった経緯なのだろう。
心底残念ではあるのだが、恐らくは一般人であるのだろうに、こんなマフィアを助けてしまったまだ見ぬ人間に軽く同情した。何と不運なのか。

「やーっべあの番組録画し損ねてた!!」

エプロン姿のお玉を持った家庭的な姿の謎の青年が無遠慮に扉を開ける。
突然の登場に、私はらしくもなく呆気にとられた。そしてそんな私の視線に気づいたのか、青年が「あーっイケメン君起きた!いや俺がデカい声出してたせいかな!?ごめんね!?」と私のところへと近寄る。いやイケメン君って。確かに顔がいいのは自他共に認めてるけど、安直すぎないかい。

「君は……」

上体を起こせば、心配そうに青年は私を見つめる。
……この反応だと、この青年が私を助けてくれたのだろう。

「川に流れてたから此処に連れて来たんだ!身体冷え切ってたしね。とりあえずは俺の洋服を勝手ながら着せた!あと外套とか、スーツは今浴室で乾かしてる途中だよ」

「そうじゃなくて、君…」

「俺は渡瀬A。目を覚まして何より!」

ニコニコと笑う渡瀬A君、には謎の包容力というものを感じる。兄弟とか、居る類の包容力だなと思う。

マフィアに居る時は決して向けられたことの無い屈託な笑顔に、何故だか妙に逆らえない。
調子狂うな、と思ってると「イケメン君の名前は?」と訊かれる。

「……太宰で良いよ」

名前を云えば彼は立ち上がる。
「太宰君ご飯食べられる?今作ってるとこなんだ」と訊かれ、そう云えば今日は何も食べて無かったな、と空腹を自覚した処で素直に頷けば、「ちょっぱやで作るから寛いで待っててね」と台所へと戻って行った。


「………お人好しなのかな」

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- 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年9月28日 16時

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