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猛毒*78* ページ37

__Law__






大勢いた餓鬼どもは島の開放を伝えるために自分たちの家へと戻っていった。





「…シャチ、ペンギン、行くぞ」




俺はその様子を見て船に帰ろうと歩き出す。
二人とも俺の後ろについてくるが、薬屋とジル屋は慌てて俺を呼び止めた。




「あ、待ってくれ!」
「お兄ちゃん!もう行っちゃうの?」




俺は振り返ることなく答えた。





「用は済んだからな。長居する必要はない」
「し、しかし君にも、君の仲間にもまだきちんとした礼ができてないじゃないか…!」

「俺たちは俺たちの都合で動いただけだ。海賊に礼なんてするな」

「でも…」




食い下がる二人に俺は舌打ちをこぼす。
こいつらには俺たちが正義の味方にでも見えてるんじゃないだろうか。

馬鹿が。俺たちは海賊だ。世間の悪党だぞ。




「ほかの住人に俺たちがここにいたことがバレてみろ。面倒なことになるだろうが。
海軍を呼ばれて困るのはこっちなんだ、それくらい分かれ」

「それは…」

「…じゃあ、このままお別れなの…?」


「………あァ」





背後から鼻をすする音が聞こえ目を向けると
ジル屋が目に涙をためて服の裾を強く握っていた。




「でも……でも…!」
「ジリアン」




何かを言いかけたジル屋を、薬屋が首を横に振って止めた。




「…道中、気を付けて」
「フッ、ご丁寧なもんだな」



俺は二人が引き留めないことを確認して再び背を向けて歩き出した。



「…あの子だいぶキャプテンに懐いてるみたいですけど、何も言わなくていいんですか?」



こそっと耳打ちをしてくるシャチに頷くペンギン。



「海賊が餓鬼に言うことなんかねェ」



間髪入れずそういうと、二人は息を吐いて大人しく元の位置に戻りついてくる。
俺たちはそのまま船へ歩みを進めていたが、もうすぐであいつらの視界から消えるだろうという時。



「お兄ちゃんーッッ!!」
「!?」



島全体に響き渡るような声が鼓膜を貫いた。




「みんなを助けてくれて、本当に、ありがとうーッッ!!」




大声に慣れていないのか、後半はかなり声が裏返っていた。




…あいつの中での俺は随分といい人間らしい。
いくら俺が賊だのなんだの抜かそうが、それは覆らないんだろう。

だったら、態々訂正する必要もないか。
自由にさせてやればいい。
あいつの中のことは、あいつ自身が決めればいい。





「…もう二度と会わねェだろ」





俺は振り返ることなく、船で待つ仲間の元へ歩き出した。

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凛月のさぶ。(プロフ) - Nakoさん» 返信遅れてすみません!コメントありがとうございます!良かったです!ぜひ楽しんでください😊 (7月1日 14時) (レス) id: e8fb34f3b7 (このIDを非表示/違反報告)
Nako(プロフ) - すみません。見られました! (7月1日 14時) (レス) id: ce50961c41 (このIDを非表示/違反報告)
Nako(プロフ) - 中編集がみらません。年齢制限の変更はどうやりますか?楽しくて何回も読んでいます😊 (7月1日 13時) (レス) id: ce50961c41 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - aimerさん» レスを付け忘れていました…。また不明点などありましたらお気軽にお声がけ下さい! (5月27日 23時) (レス) id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - コメントありがとうございます!中編集の方はアプリでは閲覧できませんので、ウェブから占ツクのサイトへアクセスして頂いて、それでも見つからない場合は設定から年齢制限の変更が必要になります。探して頂いてありがとうございます…中編集でお待ちしております。😊 (5月27日 23時) (レス) id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凛月 | 作成日時:2023年2月15日 1時

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