闇の鏡の前で反復横跳びすんな

入学 ページ3

＿＿＿＿コンコンコンコン。


突然鳴らされたノックの音で目が覚める。


｢はいはいはいはい、今出る今出る……｣


ベッドからむくりと起き上がり、まだ眠い目を無理やりに開けておぼつかない足で玄関へと向かう。


こんな貧乏屋敷へ、こんな朝早くに訪ねてくるなんてどこの馬の骨だ。

最悪な夢に最悪な目覚め。
いい加減にしろ、もっと寝かしやがれ。


心の中でデカい悪態をつきながら手すりを頼りに歩みを進めていく。ああ眠い。



そういえば、今日はナイトレイブンカレッジの入学式だ。
私の幼馴染は無事に入学ができたのだろうか。

＿＿＿＿本当は私も同じ進路に進みたかったが、ナイトレイブンカレッジは男子校。
女の私には縁のない場所。
こればっかりはどうしようもない為、諦めはとっくに着いている。



ガチャリ。

玄関の扉を開け、眠気で閉じかけていた瞳を開いた。



｢……はい！？｣

｢ブルルルルル……｣



扉を開けた途端、黒い馬に出迎えられる。

綺麗に手入れされた毛艶のいい黒馬が、これまた立派な馬車を引いていた。
黒馬は、待ちくたびれたとでも言うように、首を横に振りながら鼻を鳴らした。



｢おいおいおい……最近の馬は雌と雄の嗅ぎ分けもできないの？｣



＿＿＿＿扉を開けた先に立っていた馬の骨が、まさかナイトレイブンカレッジの馬の骨だとは思ってもいなかった。


ははは、と私が笑いながら話しかけても、黒馬は仏頂面で無愛想な馬のままで。
全く興味が無さそうに“早く乗れ”と私を急かす。

馬の唾がつく、袖を引っ張るのはもうそろそろやめて欲しい。


｢勘弁してよ〜。乗るから、乗るから！｣


＿＿＿＿乗ってもいいけど、私女なんだよな。


というより、この馬どうやってノックしたんだ……？

次ページ→←プロローグ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す