76 ページ30
・
出張が終われば伊地知が迎えに来て
今日のAの迎えは僕が行くと伝えた。
「この前の土曜日、Aさんと何か…」
『何かってなに？』
「いえ…なんでもありません」
バックミラー越しに伊地知と目があったと思えば
すぐに逸らされて
僕は前のめりになると
運転している伊地知の肩をつかむ。
『何かってなに？
Aに関することは隠すな』
そういえば観念したのか小さな声で話し出す。
「…五条さんに言われた通り
土曜日の朝、お迎えに行ったのですが
ひどく落ち込まれてるようで」
『落ち込んでる？Aが？
僕が出張行ったからかな』
思い当たる点といえばそれしかないし、
「落ち込んでいると言うよりも、
ずっと泣かれてました」
Aが泣いていた？
昔から彼女は基本的に
人前では泣かないように我慢する癖がある。
夫婦になってからもどれだけ泣きそうになっても、
Aは必死に我慢しようとするし
目に涙を溜めて何事もないふりをする。
そんなAがずっと泣いていたなんて、
余程のことに違いない。
『…Aは何て？
伊地知のこと信用してるから何かしら話したでしょ』
「詳しくは聞いていませんが、
どうやったら初恋は消せるのか
ただその質問をされただけです」
初恋…
付き合っていた頃、Aがふとした時に言ったから
初恋の相手は知ってる。
黙ったままの僕に伊地知は気まずそうに言葉を続けた
「そしてもう一つ悪いご報告が」
『Aの情報がバレた、でしょ？』
「ご存知だったんですか？」
『耳に入れたわけじゃないけど、
ここ最近僕の周りをうろついてる馬鹿がいるからね』
命知らずにも程があると呆れていれば
「Aさんが亡くなるなんてこと…」
『あるわけない。
それだけは絶対にさせない』
「身辺警護のレベル引き上げますか？」
『嗅ぎ回ってた奴らはもう手を回してある。
まあでもそいつらがどれだけ周りに話したかなんて
こっちでは分からないからね、
これからの送迎は全部、僕が行くよ。
無理な日は伊地知に頼むけど』
そう言って肘をつきながら
外に目線を移せば懐かしい場所を通る。
この辺りは、僕らが飼っていた猫が
住んでいる場所だ。
そのことを思い出した僕は、
携帯を取り出して家主に連絡を入れる。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2623人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわり - 完結お疲れ様でした！ 今まで読んできた夢小説の中で1番感動しました、、、映画を1本見終わったぐらいの満足感です、、五条sideがもうめちゃめちゃに良くてキュンキュンしまくりました、、、素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年2月7日 17時) (
レス) id: 2fbec0a3cf (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。ううっってなったり、きゅんしたり、苦しくなったり…めちゃめちゃ感情移入していました。最後の一気に出してくださった悟side、すごくストンって心に落ちて大満足でした。愛情溢れる作品に感謝です！ (2021年2月1日 17時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
N(プロフ) - 完結、お疲れ様でした...！！！！私が読んだ夢小説の中でも一位と言っては過言ではないくらい面白い作品でした！！！次の作品も頑張ってください！！！応援してます！！！ (2021年1月31日 16時) (レス) id: 39ef0a72f1 (このIDを非表示/違反報告)
五条(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ちゃんとキャラが生きてて、感情移入しながらずっと読んでました…笑。私の語彙では言い切れないんですけど本当に素敵でした！！ (2021年1月31日 13時) (レス) id: b2b6255114 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 完結〜！お疲れ様です！すごすぎ…映画見たようでした！！！ (2021年1月31日 1時) (レス) id: 35a64f1103 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mai
| 作成日時：2021年1月3日 8時
