ヤバいやつ ページ44
｢…っ…。…あれ…｣
後頭部のズキリとした痛みで目が覚める。
目を開けると天井が見える。どうやら、ベッドに寝かされているようだ。
｢う、動けな…｣
しかしどうやら、腕を拘束されているようで動けない。
ここはどこだ。
何やら部屋の一室のようだが、窓は一つもなく、扉が1枚あるのみ。
天井に吊り下げられた蛍光灯の明かりのみ。ほのかに薄暗く、隅まではっきり見えないのが不安を掻き立てる。
｢やあ…、やっと、目が覚めたかい？｣
ビクリと身体が跳ねる。
この声。
｢いや、本当に、この作戦が上手くいくとは、思わなかったよ…。彼らが単純で、助かった｣
先程、情報提供をしようとしてくれていた男性。
しかし先程までの気の弱そうな雰囲気はどこへやら。
なぜか不思議な自信を感じる。
｢ここは…？｣
｢んー、そう、だね。ココは、ボクの特別な場所さ｣
｢特…別｣
｢そう、いや、しかし、本当に、キミと二人きりになれて、嬉しいよ｣
息を荒らげ、爛々と輝く瞳が近づいてくる。
｢今日、街でキミを見かけた時、とても、とても惹かれたんだ。これは運命だ、って。その宝石のような瞳で、ボクを見て、欲しいって｣
自由な足を使って、あとずさる。コイツ、ヤバいやつだ。
｢その瞳が、恐怖の色に染まるのを、見たかった…！｣
しかし、後ろはすぐに壁に阻まれ、下がれない。
横へ逃げようにも、腕の拘束のせいで不自由だ。
｢キミは、ボクのこと、知ってるかい？｣
｢い、いえ…｣
｢…そうか。それは残念。でも好都合。どうやら、ボクは巷で殺人鬼と呼ばれてるようで。とても不愉快だ。ボクは殺したくて殺してるんじゃない。ボクが満足しようと思うと、死んでるんだよ｣
男がベッドに手をつく。ギシと小さく軋む。
｢ただ痛みに顔を歪める女の子が見たいだけ。ただ。それが若い子だと尚良。そして、女の子の血ってキレイだろ？苦痛と恐怖の色と血が混ざり合うと、本当に綺麗なんだ…ああ…、キミの目に宿る恐怖の色…見るのが楽しみだよ…｣
｢…っやめて…！触らないで…！｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
