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私とさよ子の攻防は続く。
すると次第に、無惨さまがわずかに苛立ちを覚え始めているような様子を見せてきた。
無惨さまは何に苛立っているのだろう。
さよ子は気がついていないけれど、無惨さまはときおり何かを強く訴えるように私を見ている。
私がどうしたのかたずねようとすると、決まってさよ子が遮ってきた。だから聞けずにいた。
私も自分を食べろと主張をするさよ子を前に、言葉を飲み込んでしまっていた。さよ子なんて食べられてしまえばいいという気持ちと、無惨さまはさよ子を食べないで欲しいという気持ちが混在する。
とっても、醜い気持ち。
そんなこんな、さよ子の細やかな抵抗は日々続き、しかしそれでもさよ子は満足出来なかったらしく、彼女はとうとう踏み込んではいけない領域まで土足で踏み入り始めた。
「月彦さま、私も学校で異国語を学んだことがあります。読書のお手伝いします！」
言って、さよ子は洋書を手に取った。
思えばその瞬間、私の中にずっと積もり積もっていたものが破裂したのだ。
「だめ」
ぽつり、と言葉が溢れた。
私の心の鱗片。欠片。
まごうことなき本音は、一度脆くなった部分からじわじわと滲み出し、やがて私の口を満たす。
「だめ、もうだめ。限界。さよ子、もうだめだよ、それだけは許せない。私は無惨さまのAで、もうそれでいいの。だからーー」
自分でも何を言っているのかさっぱりだ。
だけどもう止まらない。
もう我慢出来ない。
「ーー無惨さまに、近寄らないで」
さよ子は目を見開いた。そして眉を寄せ、冷淡な瞳で私を射抜きながら近くにいる無惨さまの服に手を這わす。
「急にどうしたのA。月彦さま、私怖いです」
ハッと我に返った私はうつむいて、無惨さまを見上げられずにいた。怖いのはこっちだって同じだ。こんな、独占するみたいな、無惨さまを制限するみたいな気持ち、無惨さまに知られたくなかった。
縛られることを、執着を嫌う無惨さまに、知られたくなかった。
きゃ、と小さな悲鳴が聞こえた。
遅れて尻もちをつくような音も。
「……顔を見せろ、A」
顎を掴まれ、私は上へと向かされる。上を向いたその先、私の顎を掴む張本人、無惨さまは、ぎらぎらと欲望の光る瞳を見開き、笑っていた。
「やっと言ったな、A。私はお前がそうやって私への独占欲を口にするこの日を待ち望んでいたんだぞ」
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モブちゃん - 無惨様、優しい！マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (
レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです！というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…？！ (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年10月22日 21時
