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「それで、その顔立ちの整った男がどうしたというんだ」

 むす、と眉を寄せ、いつにも増して不機嫌そうな無惨さまの声に、私はあっけらかんと答えた。

「すんごく奇抜な服を着ていたんです。ですが、やっぱり顔立ちが整っているから、それっぽく見えるんですよね」

 羨ましいなぁ。なんてつぶやいたら、いっそう無惨さまの眉間のシワが濃くなった。

 無惨さまはこうして私が街へと下りるたびに、どんなものを見て、どんなことを感じたか、事細かに聞く。
 それだけじゃない。私が街へ行った日は必ず、玄関で私を待っている。扉を開けた瞬間、玄関のど真ん中で足を組んで本を読む無惨さまと目が合うのだ。これじゃあどちらが主かわからない。
 そんなに気になるのなら、一緒に行けばいいのに。そう思うのだけれど、無惨さまいわく、それだと意味がないらしい。

「私よりも、その男がいいのか?」

 言葉に、私は目をぱちくりさせた。
 不愉快げに私を睨んでいる無惨さまとの距離を詰め、両手を振りながら否、の気持ちを示す。

「無惨さま、無惨さまは例外です」
「……例外?」
「はい。無惨さまと比較できるようなものはこの世には何一つとして無い、ということです」

 だって、無惨さまは造形美過ぎる。これまでいろいろな姿の無惨さまを見てきたけれど、どれをとっても冴え渡る美しさが輝いていた。ちなみに、ここ最近の私のイチオシは着物を着た女性の姿の無惨さまである。
 と、べらべらと無惨さまの私的好きポイントを述べると、無惨さまは視線をふっとそらした。そして言葉なく立ち上がると扉の向こうに消え、間もなく戻ってくると、女性の姿の無惨さまとなっていた。

「無惨おねぇさま!」

 わーいと両手を上げて抱きつくと、おねぇさま姿の無惨さまは柔和に目を細め私の頭を撫でてくれた。

「A、早速買ってきた本に目を通そう」

 低く落ち着きの払われた声に私は顔を上げ、無惨さまに誘導されるがまま書斎へと向かう。最中、ふと、富岡義勇と名乗る彼が話していた事件のことを思い出した。

 近頃、若い女性が誘拐されている。

 ちなみに、鬼にとっては男の人よりも女の人のほうが「良いお肉」であるらしい。

「どうした、A。眠いのか?」
「……いいえ、なんでもないです、無惨さま」

 ……まさか、ね。無惨さまの訳がない。
 ありもしない可能性を振り払うよう、私は何度か首を振った。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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