第五話 ページ6
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トランプだけだったり、トランプの前に本人も居たり。トムラさんはゆらゆらしている人だった。存在の輪郭が曖昧なのに、いや、曖昧だからこそ、感じ取ってしまう。
気がつけば私は、お金を稼ぐことを目的としていたこのアルバイトに、別のものを求め始めていた。本を読む時間と同じように、トムラさんと過ごす時間は自分が0.5ズレているような感覚だった。一歩、この建物の外に出てしまえば0.5のズレはもとに戻ってしまう。私は周囲の人たちと同じように生きていく。感動して動けなくなるその瞬間まで、小さなことを考えて生きていく。
「トムラさん、掃除終わりましたよ」
器用にバーの脚の長い椅子に横たわるトムラさんは目を開くと、頭を上げた。そして寝起きの眠たそうな目をこすりながら隣の部屋に頭をつっこむと、声を上げた。
「うわっ、すげぇ綺麗になってる。この部屋、床あったんだ」
「そりゃあありますよ、部屋ですもん」
トムラさんは視線を私に戻すと、感心した様子を隠すことなくもう一度すげぇ、と呟いた。
「家政婦たるものこのくらい出来て当然ですよ！」
えっへん、と胸を張るとトムラさんはニヤついた顔で私の頭を指さした。
「家政婦さん、喜び隠しきれてないけど？」
私はハッと頭を触るとそこには大きな大きな花が咲いていて、花びらは喜びを表す黄色に染まっていた。慌てて頭を手で手で覆って黄色い花を隠すけれど、指の隙間から花びらが溢れる。廊下にひらひらと黄色い花が散って、トムラさんは可笑しそうに笑って言った。
「A、単純過ぎだろ」
私は一瞬、思考が停止した。聞き間違いかと思って一歩踏みとどまるけれど、確かに言っていた。A。
花房とかAさんとか全部通り越していきなりA！
トムラさんは私の動揺に気が付かない様子で私を馬鹿にしたように笑いながら掃除された部屋中をぐるぐる回る。私は抑えた頭のてっぺんからまた花が咲く気配を感じて、慌ててその場から逃げる言い訳を探した。
「あ、わ、私、キッチンの掃除してきます！」
は？ と不思議そうなトムラさん、何となくの恥ずかしさで逃げるその間、ひらりと落ちた一枚の花びらは、ほんのり赤みを帯びた桃色だった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
