第四十七話 ページ48
*
「……トムラさん、もしそんなに心配なのなら、私のことをずっと見ていて、守ってくださいよ」
トムラさんの頬に手を這わす。指でその輪郭をなぞりながら、私達は目を離さなかった。離せなかった。
「その代わり、私はトムラさんの生活を守ります」
トムラさんの目の下の隈をなぞる。トムラさんはピクリと肩を震わせると、眩しそうに目を細めた。
「どうします？ 今ならお安いですよ、私。ただし、今を逃したら次はないです」
……悪くないでしょう？
「そうだな、悪くない」
トムラさんはそう言い、震えるように薄く笑うと、私を抱き寄せた。ぎゅうぎゅうその腕の中に閉じ込めて、私は窒息しそうだった。
花が開く。黄色い花、ピンクの花がふわふわ散って、全身が喜びに浸される。
ごほん、と大袈裟な咳払いが聞こえて私は顔を上げる。私はそのときようやく、バーの隅っこで居心地悪そうにこちらを見る人たちに気がついた。ニヤついた荼毘さん、頬を染めるトガさん、ゆらゆら揺れる黒霧さん、あと何人かの知らない人たち。私は恥ずかしくて恥ずかして、トムラさんの腕から逃れると、小さく縮こまった。トムラさんは拗ねたような表情を見せる。
「見てたんですか……」
蚊のなくような声で黒霧さんにたずねると、黒霧さんはふふふと不敵に笑った。
「知りませんでしたよ、花房さんがあんなに情熱的な方だったなんて」
ぼっと顔に熱が集まる。
トムラさんとの再会の喜びで気が付かなかったけれど、確かにあれはあまりにも……。
「……恥ずかしい」
穴があった入りたい。
ちら、とトムラさんを見たら、片膝を立ててそんな私の様子を楽しそうに観察していた。そんな顔だけで、私の恥ずかしさはどこへやら、もう何でもいいかと思ってしまう。トムラさんが腕を広げるので、私は衝動的にその胸に飛び込んだ。
「再就職を希望します」
「永久就職になるけど、それでも良いか？」
ちょっと古い表現、なんて小さく笑う。いたって真剣なトムラさんの顔に、私は不敵に微笑んだ。
「望むところです。トムラさんも、私以外の人を雇っちゃダメですよ」
縛る約束は言葉遊びだ。お互いそんなことできやしないと分かっている。
「……A」
「好きですよ、トムラさん」
ひゅー、と荼毘さんが口笛を吹くのを皮切りに、バーの隅にいた人たちがわらわらと近寄る。トムラさんは嫌そうに私をまた抱き寄せると、しかし幸せの滲む顔で、仲間をあしらうのだった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
