第三十三話 ページ34
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「……ふぅ、これで大方の片付けは終わりましたね」
ようやく床が見えてきた部屋を見て、私は満足感を覚えながら汗を拭った。盛大に窓を開け放ち、蝉の声でも聞きながら部屋の換気をしたいところだけど、本日はあいにくの雨である。
そう、雨である。雨だから、今日は洗濯物は干せないなぁなんてことを考えながら歩いていたら、毎度のごとく荼毘さんに連行され、彼がめちゃくちゃにした部屋の掃除をしているのだ。一体これで何度目だろう。いつもいつも急に来るから、せめて連絡をするか前もって言ってくれれば良いのにと思いつつ、そんなことをする人じゃないかと勝手に納得する。
荼毘さんはのらりくらりしている人だ。それこそトムラさんよりも捕まらない、定まらない。
私はそんな荼毘さんが嫌いではなかった。
「悪いな、ポンコツ」
「悪いなと思ってるならポンコツ呼びをやめてくださいよ。私には花房Aって立派な名前があるんです」
私が口を尖らせて言うも、荼毘さんは笑ってはぐらかす。どうやらポンコツ呼びはやめる気は無いらしい。そうなるとなんとなく私の方も意地になってしまう。いつか荼毘さんにちゃんと名前で読んでもらうことを私の中での小さな目標にしよう。
と、二人うずくまって細かいゴミの分別をしていたら、突然荼毘さんが弾かれたように顔を上げた。そして険しい顔をして、窓の外をじっと見つめる。私はその横顔に、昔テレビで見た、野生の狼が狩りをするときの様子を思い出した。じっと息を潜め、耳を澄まし、感覚を研ぎ澄ます。全身全霊で相手の様子を観察して、少しでも隙きを見せようものなら飛びかかるべく四肢に力を込めるのだ。
「……荼毘、さん？」
ひそひそ声になってしまったのは、荼毘さんを狼と、アパートの一室を真夜中の森と勘違いしたからであろうか。荼毘さんはちらりと私を見ると、私の手首を掴み、立ち上がらせた。
「今日はもういい、解散だ」
「え？ でもゴミの分別が……」
「残りは俺がやる。送るから、靴を履いて荷物をまとめろ」
ただならぬ気配に私は言い返す言葉を飲み込んだ。何が起こっているのかは定かでは無いけれど、どうやら私は今すぐに家に帰ったほうが良いらしい。
ドアを開けると、向こう側はバケツをひっくり返したような雨だった。遠くは見えない。雨粒で霞んで、まるで海の中にいるみたいで、私は背後からサメが大口を開けて迫ってくるさまを想像して、ぶるりと身体を震わせた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
