第二十五話 ページ26
*
「得意なこと？」
そうめんを取り分ける手をとめ、はたと考える。その日のお昼、結局そうめんをつくり、恐縮ながら一緒に食べさせていただくことになった私へトムラさんはそう質問した。いわく、得意なことは何だ、と。
「そうですね……家事、とかですかね？」
「それは知ってる。それ以外、無いのか？」
トムラさんはそうめんを受け取ると当然のように私の隣に座り、至近距離かつ斜め上から覗き込んできた。それ以外、と私が唸るも、トムラさんはじっと黙って私を見続けている。どうやら納得する答えを聞くまでゆるしてもらえないらしい。
「ヨーヨー釣り、とか？」
ぽつり、ふと思いついてつぶやくと、トムラさんは首を傾けた。
「ヨーヨー釣り？」
「はい、ヨーヨー釣り。知りませんか？」
「知らないな」
ふむ、と私はそうめんを黒霧さんに取り分け視線をさまよわせる。なんと説明したもんか。
「夏祭りとかの出店にあるものなんですけど、子供用のプールにヨーヨーがいくつも浮いていて、それをこよりの先にかぎ針みたいなものがついているやつで釣るんです」
ちょいちょい、と釣る動作を見せてみると、トムラさんは今度は反対側に首を傾けた。
「それ、楽しいか？」
「楽しいですよ！ 私、小さい頃けっこう得意だったんです！」
信じてない顔をトムラさんが露骨に見せるので、思わず説明に力が入る。
そう、私はけっこうヨーヨー釣りが得意だった。母に手を引かれ夏祭りへ行き、水面に浮かぶ色鮮やかなヨーヨーに心を惹かれたのだ。美味しい食べ物やらお面やらに目もくれず、私はヨーヨーに釘付けになってしまった。
なぜ急に、こんなこと思い出したんだろう。母と行った夏祭りの記憶なんて、随分と長いこと忘れていたのに。
「……そういえば、今日は夏祭りが開催されるらしいですね」
黒霧さんがそうめんを啜る合間にそう呟いた。それを起因にはっと思い出す。そうだ、バーに来るまでの道のりに、夏祭りのポスターが貼ってあったのだ。きちんとそれを認識したわけでは無かったけれど、私の無意識下で幼い記憶を掘り起こすには十分事足りたらしい。
「トムラさん！」
そして私は、頭の中できらりと名案が閃き、ヨーヨー釣りの説明への熱を存分に残した勢いでトムラさんを見上げた。少し驚いたらしいトムラさんがのけぞる。
「一緒に行きましょう、夏祭り！」
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
