第十八話 ページ19
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黒霧さんは何も言わず、ただ彼の服の裾を握りしめることしか出来ない私の頭に、そっと手をのせた。
トガさんは不満そうな声を上げつつも、黒霧さんの背後で震える私をなぜか死にかけの子鹿と例えて、また可愛い可愛いを連呼しながらバーを去って行った。
ふと、本人に悪気は無いのかもしれないと、不思議な考えが頭をよぎったけれど、それでもナイフを向ける彼女に近寄るのはヤバイと本能で危ぶんでいた。
「……花房A」
バーカウンターの前に座り、覗き込むように私をじろじろ観察してきた男の人は、そう小さく呟くと、周囲に散った花びらの一枚を手にとった。
「……次はいつ来る？」
花びらを指でつまむと、男の人は場違いにもそう聞いた。私は黒霧さんの影からほんの少しだけ顔を出して、男の人の姿をしっかりと見た。火傷のような、不思議な色の皮膚に真っ黒の髪。くたびれたシャツにくたびれた上着が、彼の異様さをありありと際立てていた。
「次、ですか？」
「そうだ。働いてんだろ、ここで」
私は迷った末、次に来る日を律儀に伝えた。嘘をつく理由が見当たらなかったのと、嘘をついてもどうせ、後々バレるのならばつかないほうがいいと考えたのだ。
「じゃあまたその日に」
俺は荼毘だ、と名乗った。荼毘に付すの荼毘、火葬の意味の荼毘。ご丁寧にそう説明して、彼はバーカウンターを超えると、意味ありげに私の顎を撫でて、ニヤリと笑った。
私は身体を強張らせ、荼毘さんの仄暗い青空のような瞳を見つめた。ゆらり、耳元に熱を感じ、青い炎を見た。
「……面白い」
荼毘さんはそう言い残して、バーを後にした。残された私は荼毘さんの手のひらからこぼれた炎の熱に当てられ、汗をたくさんかいていた。
「花房さん」
黒霧さんに呼ばれ、私はうろうろと視線を上げた。トムラさんは？ と聞くと黒霧さんは安心したように目を細めた。
「拗ねて外へ出ていってしまいました。申し訳ありませんが、連れ戻してきて頂けますか？」
私が頷くと、黒霧さんはおそらく行ったであろう場所を私に教えてくれた。それは先日、私とトムラさんが一緒に行ったショッピングモールで、それなら大丈夫です、と答えて念の為のお金を受け取った。
「あ、トムラさんは何か飲み物は持って行きましたか？」
黒霧さんは不思議そうに首を傾けると、首を横に振った。
「今日は日射しが強いので」
私が水筒にお茶を用意すると、黒霧さんはふわりと、目を細めた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
