第十話 ページ11
*
「うーん、全部おんなじに見えますねぇ、電球」
私が呟くと、トムラさんもそうだな、と呟いた。ズラリと並んだ電球の箱を見て、私とトムラさんはうんうん唸っていた。私は同じ型のものをメーカーごとに比べて、何が違うのかよくよく観察してみる。よくよく観察すると、何かしら数字が少しずつ違うことが分かった。
「……あ、新しいゲーム出てんじゃん」
トムラさんはそう言ってどこかへフラフラ行ってしまった。私はその背中を見送ったあとも、うんうん唸って箱を見比べた。
しばらくそうしていたら、気が付かぬ間に隣に店員さんが立っていた。にこやかな笑顔、ピシッとした制服が好印象な男の人だった。
「お客様、どのような電球をお探しでしょうか」
私が持ってきた電球を見せると、店員さんはそれと全く同じタイプのものを三つ出してくれた。
「メーカーごとにさほど違いはないので、どれを使用しても問題ありませんよ」
私はそうなのか、と肩をなでおろして、その中でも一番寿命が長そうなものを選んだ。
「どれも同じに見えちゃって困ってたんです。ありがとうございます」
店員さんは私の言葉に照れたように笑いながらそうでしたか、と言った。それから何かを聞きたそうな顔をして口を開こうとした、瞬間。
「＿＿おい」
と低い声とともに、トムラさんが私の背後に立った。私の肩に手をのせ、少しだけ力を込める。私が振り向こうとしたけれど、トムラさんのもう一方の手に拘束されて顔を見れなかった。
ふと、目の前の店員さんが小刻みに震えていることに気が付いた。店員さんは手を震わせていて、目を見開いて、顔を真っ白にしたかと思ったら、じわじわと後ずさって、どっかに行ってしまった。
トムラさんが手を離したので、私は首を傾げて振り返る。
「店員さん、何をあんなに怖がっていたんですかね？」
トムラさんは嘘くさく肩をすくめると、小さく笑った。
「さぁな？ 何か……やましいことでもあったんだろ」
やましいこと？ と私は再び首を傾げるけれど、トムラさんはそれっきり話をそらしてしまったので、私は少し唇を尖らせた。
店員さんは私の頭の上の当たり、つまりトムラさんの顔のあたりを見て怯えていたけれど、そんなにトムラさんが怖かったのだろうか。
確かに、少し不健康そうな顔ではあるものの、あんなに怯えるだろうか、普通。
私は疑問を胸に残したまま、電球をレジへと持っていった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
