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 落ちる、落ちる。あべこべに作られた建物、無限城。その中を落ちる私、視界の先には私を突き落とした鬼。

 ごめんなさい無惨さま、と声が宙を舞った。

 身に降りかかる衝撃を恐れ、私はぎゅっと目をつぶった。


 ◇

 
「ーー強さを証明するため猗窩座さんと西洋かるたで勝負をして、そのときに私は人と血の巡りが違うと教わったんです」

 むす、と無惨さまは不機嫌そうに眉を寄せたままそれで? と先を促す。猗窩座さんとすごす何日間かを経て今日ーーというかここ数日毎日、無惨さまがいない間に何をしたか、そして何を感じたかを話すよう言われている。無惨さま、なぜか私が猗窩座さんの話をする度に不機嫌になるくせに、一から百まで話させようとするから不思議。
 私は無惨さまの眉間を見ながら、腐った夜の街をふと思い起こし、言葉をつないだ。

「それで、もしかして無惨さまは、初対面のときからそれを見抜いていたのかなぁ、と」

 そうだとしたら、私が拾われた理由に納得がいく。無惨さまならばきっと一瞬で見抜くことなんて容易いだろうし。

 実を言うと、自分の身に起きていることながら、血の巡りの話が未だよく実感が湧いていない。本当に私は人と違う体質なのか、そもそも私の血の巡りなんて猗窩座さんに分かるのか。

「……少し奇妙な人間だとは分かっていたが、拾った頃はさほど興味は無かったな」

 私はちょっと驚いて目を見開く。無惨さまは頬杖をついて、ぼんやりと遠くを見つめた。

「どんな体質であろうと、数日も使ったら処分する気だった」

 私はびっくりしてその場で小さく飛び上がった。その場、もとい無惨さまのお膝の上。無惨さまは私の反応に小さく笑った。

「じゃあなぜ私は今生きているのでしょうか?」

 無礼にも、眉を寄せ聞いてみた。無惨さまは頬杖をついたまま視線だけを私にうつすと、口を開いて、そのまま少し動きを止めた。
 口にする言葉を迷っている、そんなふうに感じた。

 じっと見つめ合うこと数十秒。
 ぽつり、無惨さまが言葉をこぼす。

「気まぐれだ」

 気まぐれ、だけど不思議と私の頬は緩んでしまう。

「……えへへ、無惨さまの気まぐれに感謝ですね」

 よくぞこんな言うことを聞かない私を残そうと思ってくれた。無惨さまに深く感謝だ。

「…………」

 無惨さまは少し思案するように目を伏せたけれど、やがて顔を上げると、私の髪の毛をひとしきりぐしゃぐしゃにして、ふっと笑った。

 *

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久遠(プロフ) - 本当に凄く素敵なお話でした。転生した先で2人が幸せであることを願います。転生した先でのお話も読みたいなぁという気持ちもあります。きりんの木さんの小説をまた読みたいのでpixivのアカウントをいつか絶対見つけたいです。教えてくださるのが1番助かりますがね笑 (6月28日 21時) (レス) id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - 素敵な話でした。どの目線から言うのかという感じですが、文章の書き方も素晴らしいかったです。無惨様への罰という形で終わりましたが、無惨様へ幸せを送る形で、新しい二人の話を読みたかったなと言う気持ちではあります。 (5月29日 23時) (レス) @page43 id: d9f5409103 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - ドキドキが止まらない素晴らしい作品でした!!!無惨様の好感度爆上がりです! (2021年12月14日 8時) (レス) @page43 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 約1年ぶりにお気に入りを探りこの小説を読み返しました。完結お疲れ様です。寂しいですが、2人らしい最期でした。悪役である無惨さまへの贈り物、素敵だと思います。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年9月27日 3時) (レス) @page37 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
なあ - 素晴らしい作品でした。作品の中の無惨が生きているような感覚でした (2021年9月25日 2時) (レス) @page37 id: a69664b85d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2020年1月25日 12時

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