#38 ページ39
｢………2分半、遅刻｣
『細かいなぁーセーフでしょ？』
｢……はぁ…。ワンコールで出たからまぁ今回は大目にみてあげるけど｣
なんだろうこの戦場から無事帰ってきような安心感は。車に乗った途端、本当に心から気が休まった。
そうとも知らず遅いなんて苦言を吐かれたけれど。鍵を締められて帰れなかったんだ。とは言わないようにしないと追求されて大惨事になるだろう。
それに、さっきまで酔っ払ったといえどメンバーの一人と関係を持つ手前までしてしまった。日本人が馬鹿を見る、そんな恥を堂々晒してしまったわけだ。
＿＿＿＿お酒って言ってもそれほど、
私はお酒じゃなく、彼に酔ってしまったんだろうか。一瞬でも抱かれてもいいだなんて、結局私はナンシーさん達と同じ都合のいい玩具だった。
｢……ところで、なんでそんな薄着なの？｣
『あ、……暑くて。向こうで脱いだから』
もっと警戒心を持ちなさい、と散々言ってくれたマネージャーには頭が上がらないよ。
こんな不祥事。もう二度と巻き込まることはないけれど、これも一つの経験。嫌なトラウマになりそうだけど、若干勘づいていそうだがマネージャーには秘密にしておこう。
｢…………で、どうだったの飲み会｣
『…うん、普通かな。マネージャーが心配してるようなこと、なかったよ。』
｢そう。まぁ、そんなことあったら後に大問題だから。ないのが当たり前なんだけど。よかったわね」
まだ顔が火照ってる。お酒のせい？それともあのキスのせい？車の窓を開けて夜風で顔を冷やしても、やっぱりまだ覚めないまま。
あ、カーディガン＿＿＿＿＿＿＿＿
｢…(人1)。明日はオフにしようか｣
『え？！でも明日は撮影だ｢これから暫くお休みとれそうにないし、それに。そんな体じゃ撮影できないの！帰ってホットタオルで温めておきなさい。｣
『日本に帰れるって言ったのに……』
｢ありがたいじゃない。色んなオファーが来てるの。…早く寝なさいよ、その首元を温めながら！ねっ！！｣
『寝るよー寝ればいいんでしょー、はーい。』
久しぶりにしたキス。＿＿好きじゃない人としたキスがこんなにも忘れられないなんて、
まだ感触が残ってる唇に触れて、ギュッと瞳を閉じた。
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作者名：chay | 作成日時：2021年11月25日 5時
