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「……はい、どーぞ」
vipルームと書かれた、この部屋の先は何故薄暗いのか。先に入ったティアラの後を追うように入ろうと思ったのだが、ここに入ったら何かが変わる。そんな恐怖を抱いていた私の足は重かった。
中から聞こえてくる声高々な女性の声。甘く何処かすっぱい危険な匂い。
「……緊張しなくても大丈夫。ほら」
後ろからポンっと押されて吸い込まれるように入ってしまった後に、ガチャっと外から掛けられた鍵の音を聞いた。
『?』
「大丈夫、」
反射的に後ろを振り返った途端、ユンギさんの壁に立ちふさがれて。彼によって中へ中へと誘われて。
そこは、テレビでしか見た事のない光景だった。
ホテルの一室だとは思えない広さにラウンジ、バー、ダーツなどの遊具も揃えてある。屋外にはプールもあって。BGMは華やかなK-POP。
こんな空間に呆然としてしまっているとトントン肩を叩かれた。
「(人1)!来てくれて嬉しいよ。こっちで一緒に飲もう」
『……あ、?あれティアラは?』
「ん?…あ、あそこ。彼女なら平気じゃない?ヒョンと一緒だし」
颯爽と現れたジョングクの指さす方にはユンギさんに肩を抱かれたティアラ。まぁあの二人なら…と思いつつ、その距離感にどうも不信感を抱く。
そしてハッとした。マネージャーも私の事こんな風に見えてたのかなって。私もティアラが心配なように、マネージャーもこんなモヤモヤした気持ちで居て。それでも行かしてくれたんだから、
本当に早く帰ろう。
「へぇ、お酒弱いんだ」
『うん、普段全く飲まないから。たまに飲むとすぐ酔っ払っちゃうんだ』
「ふーん。……酔わせてみたい」
『……』
なんだこの甘い雰囲気。くすっと微笑んでは密着してきて「寒くない?」と頬に触れられた。咄嗟にうんと首を振ったが、彼は既に酔っ払っているのか、映像で魅せる彼とは違う。気がする。
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作者名:chay | 作成日時:2021年11月25日 5時