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side 羽生結弦
ホテルに向かおうとして会場のロビーに出たときよろけている猫の姿に肝を冷やした。
今、手の中にある猫の腕は思ったよりも細かった。
「ゆ…ゆづくん」
昌磨は驚いた表情をしていた。
猫の表情は見えない。
「昌磨、久しぶり」
「あ…うん」
昌磨はどこか、俺を避けているような雰囲気が見て取れる。
葉月がらみなのは間違えないだろうが。
「おい。猫、大丈夫か？」
だけど、昌磨にはかまってられない。
猫の顔を覗き込むと思ったより真っ青な顔をしていて、少し驚いた。
「とりあえず、救護のとこ行くぞ」
バックヤードでついさっき救護スペースを見つけた。
「一人…で大丈夫です」
猫は目さえも合わせてくれない。
「大丈夫なわけないでしょ？本番前になんかあったら困るでしょ？ほら！」
咄嗟に猫に背中を差し出す。
「俺が連れて行きますよ」
昌磨は睨むように俺を見つめていた。
悪いけど、昌磨に猫を任せる気にはならない。
いや、誰にも猫を任せる気にはならないか。
「昌磨は俺らより試合近いだろ。なんかあったらダメでしょ？」
我ながらこじつけに近いな。
「ゆづくん。周り見たほうがいいよ」
昌磨のより一層強くなった目力に周りを見ざるを得なくなり、軽く周りを見やる。
しかし、いつもの試合会場となんのへんてつもない。
「マスコミ」
そりゃあ、試合会場にはマスコミくらいいるだろう。
なのに、何故か昌磨は短くため息を付いた。
「ゆづくんがみーのことおぶったってマスコミに報道されますよ」
確かに、マスコミはどうでもいいことで騒ぎたがるがそれがどうしたというんだ。
「だから、それ見て宇佐美さんはどう思うんだって言ってるんですよ」
一瞬。ほんの一瞬。
猫の顔が歪んだように見えた。
「おい、猫。こいよ」
猫は今度は抵抗することなく、簡単に背中に乗っかってきた。
そりゃあ、今、昌磨といたくないわな。
「昌磨。お前、最低だな。今、そういうこといってる場合じゃねーから」
そんなこと言って、俺だって昌磨に「最低」だなんて言える立場じゃないんだ。
わかるよ。お前の気持ち。
葉月のことしか見えてない昌磨の気持ち。
俺も猫しか見えてなくて葉月を傷つけた。
だけど、最低のまま終わらない。
葉月のことも猫のことも傷つけたままで終わらせたらいけないんだ。
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らっき(プロフ) - 完結されてからかなり経ってしまっていますが、読ませていただいてすごく好きな作品になりました。書いて下さってありがとうございます！それだけ伝えたくてコメントしました(*^^*)見てくださるといいなぁ、なんて思ってます！ (2021年12月7日 22時) (
レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - 大変お久しぶりです。最後まで読ませて頂きました。ぜひとも、時間があるときで構いません。名前を自分の名前に変換したものを読みたいので、よろしくお願いします。 (2018年9月2日 8時) (レス) id: 058ee396c0 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - yuccoちゃんさん» ほんとうに読んでいただきありがとうございました！ (2018年4月9日 9時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - こんばんは！ゆづのドSなセリフにトキメキました！言われたい！サイコーの終わりでした！番外編で続きも読みたいです！ (2018年4月8日 1時) (レス) id: 72d5e5baf7 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 鹿さん» いつも丁寧なコメントをありがとうございます。読んでいただけてほんとうに嬉しいです (2018年3月29日 20時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：納子 | 作成日時：2017年9月7日 21時
