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キャラクター ページ7

「私さ、あなたが羨ましいんだ。」

唐突に彼女は言った。
僕は首をかしげる。
そんなこと、初めて言われたのだ。

「僕も、君が羨ましいよ。」

そう返答した。
彼女はなんでもそつなくこなせる要領のいい人間だった。

勉強も出来れば運動神経のいい。
人をまとめあげる力もあって、生徒会に所属している。
そしてなにより、確固たる自分を持っていて、ぶれないのだ。
他人にもきっぱりと言うし、だけれども空気を読める。
そして容姿端麗。

と、彼女はなんでも出来るすごい人なのだ。

そんな彼女が、どうして僕なんかを羨ましがっているのか。
僕の疑問に気づいたのか彼女は語り始めた。

「私さ、要領いいんだよね。こつを掴むのかをうまくて、大抵のことならなんでもできちゃう。」

これを言っても嫌味にならないのが彼女である。
彼女はそのことを驕らずに、かといって謙虚すぎない。

彼女は続ける。

「だから、物事に熱中したことがないんだ。なにか一つに一点集中っていうのが怖くて出来ない。自分の価値がなにか一つに決まるのが怖いんだ。」

それは彼女が語ってくれた苦悩だった。
完璧に見える彼女にもたくさんのものを抱えていたのだ。

「だからさ、あなたが羨ましい。物事に熱くなれて、自分のことのように他人と共感できるあなたが。」

自分のことをそんな風に言われて、少し嬉しかった。

「君はさ、冷静すぎるんだよね。」

「冷静?」

僕はふと口にした。

「物事を一歩引いた目で見てるから、のめり込めないんだ。自分にとって無駄なものを取捨選択しようとしてる。」

「だからさ、もっとぐちゃぐちゃになっていいんだと思うよ。学生時代しか、自分の好き勝手出来ないんだ。将来のために今を使うんじゃなくて、今のために今があるべきだ。」

胸が熱くなっていた。
彼女はその言葉をしみじみと受けとると、

「そっか。そうだね。」

それだけ呟いた。

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千代(プロフ) - すみれさん» はじめまして!そういっていただけて、とても励みになります!ありがとうございます。 (2022年4月7日 9時) (レス) id: 9dbb76ff04 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - はじめまして!すごく勉強になります。これを読んでから自分の初作品を読み直しに行ったのですが、最初の方は見事な台本書きで修正を入れました…笑 自分の作品を見直す良い機会になりました、ありがとうございます。これからもご意見楽しみにしています! (2022年4月6日 22時) (レス) id: 9225fab2c0 (このIDを非表示/違反報告)
千代(プロフ) - 丙ののののさん» そうですよね。特に、発送が奇抜で面白いものや、ストーリー自体がしっかりしているものでも、そういった台本書きのような文章になっていると、勿体無いなと感じます。しっかりと描写したら、もっと面白くなるのになぁ……と。 (2021年6月3日 7時) (レス) id: 9dbb76ff04 (このIDを非表示/違反報告)
千代(プロフ) - miyazaki_120さん» それは良かったです。頑張ってください! (2021年6月3日 7時) (レス) id: 9dbb76ff04 (このIDを非表示/違反報告)
丙のののの(プロフ) - 私も作者様が書いて下さった様な事が気になっています。台本小説が悪いわけではないんですが…説明の文章をろくに使わずにセリフとオノマトペだけで全てを完結させて、何が何だが分からない台本小説が増えて来ちゃったので…結構気になってしまうんですよねぇー…。 (2021年6月1日 22時) (レス) id: 4482ed7f20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千代 | 作成日時:2021年2月9日 21時

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