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なんと言うことだ...!!

Aは今の状況に思考回路を放棄した。

気がつくと、冷たく、右や左の判断すらできぬほど暗く、狭い、何か箱のようなもの中にいた。

起き上がろうと体をよじると、ふと、金属の刷れる音が耳に入る。

手足から、普通に暮らしていく上で、生涯体験することのないであろう、冷たい、金属特有の感覚がした。

壁に触れようと、手を伸ばすと、じゃらり、と、恐らく手首のものと繋がっているであろう鎖の音が空間に響く。

Aが壁だと思っていたものは、壁ではなかった。
細い鉄パイプのような物が縦に並び、その隙間からは、何か布のような肌触りがする。


檻だ。

ひゅ、とか細い音が喉元から発せられる。

神から新しい人生を貰ったのだと冗談めかしくいっていたが、この状況を見るに、違うようだ。

その時、いよいよ、供給情報がAの脳内許容量を越えた。

脳を休めようとその場に座り込むと、どこでもない場所を、空をぼんやり眺めた。

それは、男が幕を開け、中を覗き込んだ時も同じであった。

あまりの眩しさゆえに、肩をびくつかせ驚きつつも、その方向を向いた。

しかし、やはりAは、ぼんやりと眺めているだけであった。


そんなAを他所に、あれやこれやと事が進み、気づけば一国一城の主の元、雇用採用の真っ只中であった。

「種族は?属性は?」

一方的に質問を投げ掛けるコネシマだが、Aは忙しなく視線を彼方此方に向けるだけで、その口は閉ざされている。

それもそのはずである。

そもそも、”人間”であるAに目の前にいる”人の姿をしたナニか”のいっている種族や何やらを、理解できるはずがない。

「...ま、この時代、何も知らんで売られる奴も少なくない。」

コネシマは頬杖をつくのを止め、玉座から降りるとAのほうへと近付いた。

「大丈夫やで、ウチは実力主義やから!」

にんまりと含みのある笑みを浮かべると、近くに待機していた兵士に対して、命令を下した。

「お前にはこれから、洞窟に住み着いたモンスターの退治にいってもらう。
ここには雑魚しか住んどらんから、初任務には丁度ええやろ。」

どこから出したのか、文字の上に赤ペンで大きく丸が書かれた紙を、びらびらと手に持って揺らす。

暫くすると、扉の開く音がする。
その方向へとAが視線を向けると、自身と似たような服装が目に入る。

「よお、大先生。」

「なんやシッマ、こんな忙しい時に呼び出しおって...」

少し着崩れたスーツを羽織った男が、そこに立っていた。

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作者名:myself | 作成日時:2021年8月10日 22時

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