５８−１．なごり雪 ページ10
．
思えば、最初からどこかおかしかったんだ。
「大ちゃん！
大学、受かった！」
3月の初め、
シトシトと振る雪に身震いしながら扉を開けると、息を切らして、真奈が玄関へと駆け込んで来た。
興奮冷めやらぬその姿に、とりあえず落ち着くように言うと、真奈の声を聞きつけて、おかんがリビングから顔を出した。
「真奈ちゃん。大学受かったん？」
「大ちゃんママこんばんは！
大学！受かったんですよー！」
「あらあら〜！良かったやないの！
勉強頑張ってたもんなぁ。
あ、これからうち夕飯やけど真奈ちゃんも一緒に食べてく？」
「わ〜ありがとうございます。でも今日はお家でお祝してくれるらしいので、また今度お邪魔します！」
「せやね〜いつでもおいで」
長居する気はないらしい。
玄関で騒いでるとまたおかんが気を遣って口出しして来そうだから、とりあえず家の外へ出るように促した。
冬の夜は寒い。
上着を着ずに出てきてしまったことに後悔する。
空は真っ暗で、
1月の初めに降り始めた雪は、
もうすでになごり雪へと変わっているようだった。
あの日からずっと、思い返してしまう。
Aちゃんと、最後に会った、あの初雪の日のことを。
「これで春から念願の女子大生やで〜！
大ちゃんには勉強いっぱい見てもらったし、ほんまにほんまに、ありがとう」
「はいはい。俺よか遥生先輩のがめっちゃ心配しとったやん。ちゃんと連絡したん？」
「もちろん！
・・・春からもはるくんと一緒やねんもん。ほんまに、良かったぁ」
心底安心したように、微笑む真奈の頭に、そっと手を置く。
小さい頭。ふわふわの髪。
小さい頃から、何も変わらないはずなのに、
もう、隣にいることはできない。
「・・・行っちゃうんやな、東京」
そっと、淡い茶色の髪を撫でると、
ゆっくりと、真奈が顔を上げる。
俺を見るその目が、半月のように細められた。
あーあ、
やっぱり俺は敵わない。
いっぱい勉強して、いっぱい努力して、たくさん大人ぶって来たけど、追いつけなかった。
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もんもん(プロフ) - 遅ればせながら読み終えました！良い長編に久しぶりに出会えました泣 とても感動して胸が苦しかったですーーー！！すてきな作品をありがとうございます❤️ (2022年3月10日 4時) (
レス) @page41 id: d795766383 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - Minさん» ありがとうございます。主に新作の方をメインに更新していくと思いますので、こちらはもしかしたらゆるゆる更新になってしまうかもしれません(＞＜)申し訳ないのですが、応援して下さるとありがたいです！ (2020年8月20日 22時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
Min(プロフ) - 番外編、嬉し過ぎます(^^)続きが気になってます！新作も見ますね☆頑張って下さい！ (2020年8月15日 19時) (レス) id: 54e8e6f468 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - いろはさん» またまたコメントありがとうございます！また2人を書けて私も楽しいです(*^^*)マイペース更新になるとは思いますが見守って頂けたらありがたいです！ (2020年8月15日 15時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 番外編！すごく嬉しいですー＼(^o^)／不器用な大吾くんがこれまた可愛い(*´ω｀*)続きどうなるのかな？って、ワクワクしてます！更新楽しみにしてます(^^) (2020年8月15日 15時) (レス) id: 299f92273d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もか | 作成日時：2020年6月7日 22時
